鎌倉市の方針転換で大きく変わった2市1町の「ごみ処理広域化」計画

焼却施設を建設せずゼロ・ウェイストを目指す方針…
市長が2019年3月26日の市議会全員協議会で示した「将来のごみ処理体制についての方針」(以下、新方針)は、
新焼却施設はつくらない 家庭系生ごみを抜き取り、今泉に微生物による発酵で嵩(かさ)を小さくする施設(減容化施設)を整備して処理する 事業系ごみは全量資源化する 紙おむつの資源化施設を整備する 2025年の名越クリーンセンター(CC)稼働停止後の可燃ごみの処理は、逗子CCまたは民間事業者に委託する ― という、従来のごみ処理施策を大きく方向転換するものでした。https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/skensetsu/h310326_syourainogomishyoritaisei.html

懸念材料が多い新方針
新方針については、本サイトの3月27日付記事「『新焼却施設をつくらない』という結論を示した全員協議会」、4月27日付記事「鎌倉市のごみ処理の方向性ついて 『生環審』で指摘あいつぐ」で論じ、6月議会の一般質問(6月5日)でも詳しく質問しました。

要約すると、新方針に示されたごみ処理施策には
鎌倉市の燃やすごみを逗子市焼却施設で燃やすことに逗子市民の合意が得られるのか
名越CC稼働停止後、同様に老朽化している逗子CCでいつまで燃やせるのか
逗子CCで燃やせない分は民間施設に処理委託するというのは広域連携の枠外に踏み出すことであるが、受入可能な民間施設を安定的に確保できるのか
災害時の廃棄物処理体制としては後退するものではないか
焼却施設をつくらないとしても、生ごみ処理施設や紙オムツ資源化施設などの他の施設はつくらなければならず、地元合意は楽観できないのではないか
生ごみ減容化施設の臭気の問題や生ごみ分別収集への協力率の問題はどうなのか
事業系ごみの全量資源化は、仮に民間事業者の最新技術に頼ることができたとしても、市の処理手数料の値上げで民間に誘導することに反発が起きるのではないか
などの懸念があります。

素案の策定までに時間を要した ごみ処理広域化実施計画
2017年11月の2市1町のごみ処理広域化検討協議会で、「鎌倉市の可燃ごみを逗子市焼却施設で処理することを検討・協議事項に加えてほしい」と鎌倉市が要請したことで、広域化の検討協議は様変わりすると同時に時間を要することになりました。
ごみ処理広域化実施計画の策定は、「2018年度中」と言われていましたが、その通りには行かず、鎌倉市は2019年3月26日に新方針だけを先に示しました。

6月議会では、「新方針は、ごみ処理広域化の実施計画が出来あがるのを待って公表すべきではなかったか」と指摘しました。これに対し、市長は「名越CC焼却停止に間に合うように新焼却施設の建設を進めるには2018年度末がデッドラインだったが見通しが立たないので断念する。断念するに当たって新方針を示す必要があった」という趣旨の答弁をしています。

ごみ処理広域化実施計画(素案)の中身
新方針から遅れること8か月、実施計画(素案)は11月28日に公表されました。計画期間は、2020~2029年度の10年間で、ごみの減量・資源化施策を進め、最終年度の2029年度までに2市1町の燃やすごみの量を2017年度実績の半分以下の約2万トンまで減らす計画です。

素案策定までのこの間、逗子市CCで燃やせるごみの量・燃やせる期間、減量・資源化策の検討、各市町が担う役割分担(施設配置)などの検討に時間を要したと思われます。

素案の中では、次に掲げる第1期(鎌倉CCと逗子CCともに稼働)、第2期(逗子CCのみ稼働)の連携図式が示されています。また、計画期間外になりますが、逗子CC稼働停止以降の連携図式も示されています。
広域連携第1期のサムネイル

 

広域連携第2期のサムネイル

広域連携 逗子CC稼働停止後のサムネイル

将来的に圏内に焼却施設を持たない広域化実施計画の複雑さ
広域化実施計画は新方針とコインの表裏の関係にあるので、懸念材料は新方針と共通していますが、次のことがらは、特に注意して見ていかなくてはならないと思います。

実施計画は、2市1町において上記の連携図式のように複数の施設整備が進み、処理・資源化を委託できる民間事業者が確保できることが前提となっており、複雑な事業進捗の進行管理は容易ではない。

鎌倉市は名越CC稼働停止後の2025年度から逗子CCで可燃ごみを処理してもらうが、生ごみ資源化施設は小規模で作って順次処理量を拡大していくため、拡大整備期間中は可燃ごみの一部は自区外処理になり、整備終了後の2029年でようやく2市1町の焼却量合計が「逗子市施設の焼却可能量(2万トン)」と等しくなる。この時、鎌倉市の可燃ごみの量は1万トンにまで減っているという想定である。
可燃ごみ減量化の決め手となる生ごみ資源化施設の整備が予定どおりに進まない場合は影響が大きい。

逗子CCの稼働可能期間は概ね2034年までとされた。それ以降は2市1町の圏内に焼却施設はなくなり、可燃ごみは自区外処理・資源化となるが、そのための中継施設は鎌倉市が市内に整備する中継施設で、候補地として名越クリーンセンター跡地があがっている。中継施設のあり方も将来的に大きな問題になると推測される。

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実施計画(素案)が年明け1月6日からパブリックコメントに付されます。ごみ処理施策は市民との信頼関係があって成りたちます。多くの意見が寄せられ、行政がそれに丁寧に答えることを期待します。