犠牲者ゼロを目指す黒潮町の津波防災
満員の講演会
材木座自治連合会主催で高知県黒潮町の津波対策の担当者を迎えた講演会が開催されました。会場の鎌倉消防署講堂は、材木座、由比ガ浜だけでなく他の地域からの参加者もあって文字通り満員でした。
今回の講演会は、市議会総務常任委員会の委員が、2018年10月に実施した黒潮町視察の報告会を自治連の役員会で行ったことが発端で企画されたものです。
南海トラフ地震で最大津波高34mの想定が出た黒潮町は、過酷な想定にめげず「犠牲者ゼロを目指す」防災対策を講じており、材木座自治連合会は、より多くの沿岸地域の住民に黒潮町の取組を知ってもらいたいと考え、宮川智明・黒潮町南海地震対策係長を遠路招聘しました。
宮川係長には視察の折、佐賀地区津波避難タワーを案内していただきました。その後、高台移転した町役場で同町の津波対策全般について説明を受けました。
黒潮町の取組みについては、本サイトの2018年10月31日付記事で詳しく報告しているので、そちらを是非ご覧ください。
https://hosaka.kanagawanet.jp/blog/2018/10/31/2311/
危機感を持って取組みを急いだ黒潮町
宮川係長のお話を聞いた参加者からは口々に、「なぜ鎌倉では黒潮町のような本気の津波対策が行なわれなかったのか。この違いは何なのか」という声があがりました。
黒潮町では「町の存続すら危ぶまれる(想定)結果だ」と受けとめ、町民が避難をあきらめてしまうことを危惧した大西町長が危機感とスピード感を持って津波対策を講じ、東日本大震災から時を経ずして取組みを急いだことで国や県の補助金を有利に取ってくることができました。
地震・津波対策が短期間で大きく進捗した要因には、町内61地区それぞれに担当職員を決めた「職員地域担当制」をしいたこともあげられます。
この仕組みは、鎌倉市も採用できるはずです。
津波避難困難区域に1万人以上が居住する鎌倉市
鎌倉市では、「本市の津波避難は高台避難を基本とする」と早期に決めましたが、高台への避難路整備は進んでいません。
鎌倉市における津波避難困難区域の推計人口は12,880人(※)で、何と黒潮町の全人口(11,217人)よりも多いのです。
(※)次の鎌倉市津波避難計画 地域別実施計画の各p4参照
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/sougoubousai/documents/01zaimokuza.pdf
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/sougoubousai/documents/01hase.pdf
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/sougoubousai/documents/01kosigoe.pdf
避難標識の整備などのソフト面での対策は講じられていますが、「避難空地や避難目標地点の追加指定」「地権者等との調整による避難空地等の確保・整備の推進」「徒歩による高台避難が困難な地域での避難場所等の確保」(上記 各p7)といったハード面での整備は、東日本大震災から9年を経ても進んでいません。
この状況を何とか変えていかなくてはなりません。