携帯電話中継基地局に使わせる市有財産の所在地を非公開にするのはおかしい

5Gの基地局整備は…?
今年春から商用サービスが開始された第5世代移動通信システム(規格)5G。
5Gの電波の周波数帯は、ハイバンド(24ギガヘルツ(GHz)帯以上)・ミッドバンド(1~6GHz帯)・ローバンド(1GHz帯以下)の3種類で、総務省が携帯電話会社に割り当てたのは、 28 GHzのハイバンドと3.7 GHzと4.5 GHzミッドバンドです。喧伝されている「すごい」5Gサービスは、ミリ波と呼ばれるハイバンドの電波を発するアンテナ基地局が密に設置されて初めて提供が可能となるのだそうです(森川博之著・岩波新書『5G』)。
ミリ波は、広い周波数帯域をとることでデータの高速伝送に適する一方で、電波の飛ぶ距離が短いことが特徴で、5Gにおいては4Gよりもはるかに多い数の基地局の設置が必要となります。

総務省は、2019年4月に5Gの周波数帯を割り当てた際の「開設指針」で、全国を10㎞四方の4500区画に分けて、5年以内に50%以上の区画に「5G高度特定基地局」と呼ばれる基地局(これに小型の子局が多数ぶらさがる)を整備することを求めました。
同年6月には、5Gの小型基地局として、全国に20万以上ある信号機を活用できるようにする新たなIT戦略が閣議決定されています。

 

鎌倉市は市有建物・土地を基地局に使わせているか
膨大な数の5G基地局の整備に向けては、信号機の利用とともに既存の4G等の基地局に5G基地局の機能を追加していく方法がとられると予想されます(小型局についてはもっと小さなスペースの活用も図られる)。

TOKYO Data Highway基本戦略を掲げる東京都は、5G基地局等の設置促進に向けて、都が保有する資産のデータベースを公開し、通信事業者等からの申請や問合せに対応するワンストップ窓口を創設しています。

お隣の逗子市では、今年7月に市有地である自治会館の敷地に基地局を新設する計画が浮上しましたが、地元から懸念の声が上がって事業者が計画を撤回しました。

こうした情勢を踏まえると、鎌倉市の市有建物・土地に対しても「基地局に使わせてほしい」という新規の申請が携帯電話会社から寄せられているのではないか、と気になるところです。近い将来に5G基地局に改造される可能性があるからです。

そこで7月31日、貸付けられる建物・土地を保有していそうな15課と支所・中央図書館・浄化センター・環境センターに対し「携帯電話会社およびその代理人企業から2019年1月1日以降本件請求時までの間にあった、行政財産の目的外使用許可申請および普通財産の貸付申請ならびにその貸し付け状況がわかる文書」を公開請求しました。

 

納得できない所在地情報の非公開
情報公開制度では通常請求から2週間で文書が公開されますが、今回の請求では道水路管理課から期間延長通知があり、請求対象の全ての文書を入手できたのは8月28日でした。

その結果、保有する建物・土地を携帯電話会社が基地局を設置するために使わせていたのは、公的不動産活用課と道水路管理課の2課のみで、この間の新規申請はなく、いずれも継続使用であったことがわかりました。そういう意味では現段階では「5G推進の影響」は見て取れませんでした。

ところが、この公開請求の結果は、情報公開の視点では看過できないものでした。
公的不動産活用課が基地局に使用させている建物・土地の所在地を公開したのに対し、道水路管理課は所在地情報を全部墨塗にした文書を出してきたのです(冒頭の写真参照)。

市有財産使用許可申請 公開請求結果のサムネイル

(一部公開された情報から保坂が作表)

特に、非公開理由として、鎌倉市情報公開・個人情報保護審査会の平成24年答申第13号から「公開された情報が集積され、その結果,上記のような通信途絶をも惹起する可能性のある破壊活動が容易に実行されることになる」という異議申立人(携帯電話会社)の意見の部分を引用しているのは問題です。

この答申にかかる情報公開請求はもともと2011年5月に私が行ったもので、2012年6月に出た答申には納得していません。特に上述の部分については「基地局は目視で確認できるのに、破壊活動を行うために、わざわざ情報公開で所在地を調べる人が一体どこにいるのか?!」と呆れています。

しかも、2011年に行ったのが、携帯電話会社が鎌倉市に提出した「携帯電話等中継基地局設置等計画届出書」等の公開請求であったのに対し、今回の請求は取扱いに透明性が求められる行政財産にかかるものです。
このまま見過ごすわけにはいかないと思っています。