携帯電話中継基地局に使わせる市有財産の所在地を非公開にするのはおかしい (その2)

はじめに

スマートフォン・携帯電話・タブレットをほとんど誰もが使う今日、携帯電話中継基地局は生活に必要なインフラと言ってもよいでしょう。一方、基地局から発する高周波の電波(電磁波)が身体に及ぼす影響については、海外(特に欧州)では過去の疫学的な調査に基づく規制が必要であるとの認識が広がっています。

基地局からの距離や方向によっては、強い電力密度の環境で24時間暮らすことになります。土地や建物の高低差等により、居室の窓の外の同じ高さのところに別の建物の屋上に設置された基地局が見えるような場合は特に要注意です。

基地局をつくるべきではない、とは主張しませんが、携帯電話会社が基地局を設置する際には、学校・保育所・幼稚園・高齢者施設等の近傍は避けた上で、周辺住民に設置計画を知らせて、電波を強く受けるおそれのある住宅・居室についてはリスク軽減の対策を講じられるようにするべきです。そういう意味で、基地局設置場所の情報を公開することはとても大切です。

今後、近距離にしか届かない5Gのミリ波の導入を進めるには、小型基地局を100mおきに設置する必要があるとも言われており、住民が居住エリアの電波環境を知ることはこれまで以上に重要です。

 

市有財産に設置される基地局の「位置情報」の公開を求める訴訟を提起しました
「鎌倉市の市有建物・土地を携帯電話中継基地局の設置のために使わせてほしい」という携帯電話会社からの申請に関する文書を情報公開請求したところ、保有する建物・土地を中継基地局設置に使わせていたのは、公的不動産活用課と道水路管理課の2課でしたが、このうち道水路管理課が一部公開した文書は、基地局の場所(位置)を全面的に墨塗りしたものでした。

この所在地非公開については、本サイトの9月23日付記事で報告しており、末尾に「このまま見過ごすわけにはいかない」と書きました。

残念ながら一部公開(=位置情報の全部墨塗り)処分を見直す動きはなかったため、本日10月20日、鎌倉市長に対し「携帯基地局位置情報」の公開を求める訴訟を提起しました。

 

携帯基地局位置情報の非公開は違法
この訴訟は本人訴訟ではなく、代理人をたてた訴訟であり、本件携帯基地局位置情報非公開の違法性を多角的に説き起こした訴状を提出していますが、原告として特に強く思っていることを簡潔に述べます。

1)携帯電話中継基地局の位置情報は、「法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」情報でもなければ、「犯罪の予防などに支障を及ぼすおそれがある」情報でもない。むしろ、本稿「はじめに」でも触れたように、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するために公開を必要とする情報」です。

2)特に今回の情報公開請求は、公有財産を民間会社に使用させる行政運営に関わるものです。行政手続法が第1条において、「透明性」を「行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう」と定義していることからしても、携帯電話会社が民有施設に基地局を設置する場合の計画届出書に記載される位置情報とは、格段の違いで透明性を求められるものです。
現に公的不動産活用課は、同じ市の組織でありながら位置情報を公開しています。道水路管理課による基地局位置情報の非公開は、行政の透明性を著しく損なうものであるので是正を求めます。

追 記

非公開理由として、道水路管理課は、鎌倉市情報公開・個人情報保護審査会の平成24年答申 第13号の次の部分を抜粋して挙げています。

「基地局の詳細な設置場所が情報公開制度を通じて公開されることになれば、公開された情報が集積され、その結果,上記のような通信途絶をも惹起する可能性のある破壊活動が容易に実行されることになるのではないかと基地局を管理する立場にある異議申立人(携帯電話会社)が懸念したとしても、あながち不合理とはいえない。」(答申p23~24)

答申のこのくだりは、「誰が好き好んで請求者が特定される情報公開制度を使って基地局の設置場所情報を収集した上で破壊活動に及ぶのか!」とツッコミを入れるしかない部分ですが、この答申に至る経緯は次のとおりです。鎌倉市における、携帯電話中継基地局の情報公開をめぐる攻防…。
携帯基地局位置情報をめぐる攻防のサムネイル