請願・陳情提出者の意見陳述を「休憩中」としないように条例を改正

2014年12月、鎌倉市議会基本条例が制定されました。この条例により、議会報告会・意見聴取会の開催、委員会における委員間の自由討議、審議における市長等答弁者の反問権などが新たに明文化されました。

鎌倉市議会は、施行から5年目となる昨年度から、条例の見直し作業に取り組んでいます。
今年4月までの間に4回の「条例評価・検証協議会」を開催して条例の運用状況等についての課題抽出を行い、今年6月からは「議会基本条例の改正に関する特別委員会」を設置して、条例改正の議論を重ねています。

議会改革の方向性
議会改革の方向性としては、大きく「議会をよりいっそう市民に開かれたものとする」ということと、「二元代表制の一翼を担う議会の権能を高める」ということがあげられます。
前者については全く異存がありませんが、後者については「議会として一つにまとまらなくては力を発揮できない」という発想から、「議会の総意」をあらゆる局面で重視する傾向が見られ、私自身はそのことに違和感を覚えながら条例改正の議論に参加しています。

ともあれ、前者については、これまでの特別委員会の検討の中で、ひとつ成果がありました。
請願・陳情提出者の委員会での意見陳述は、これまで「休憩中」の扱いとされ、インターネット中継をせず、会議録にも残りませんでした。それを「委員会開催時間内に行う」に改める新たな条文を追加することが決まったのです。

HP20.10.29委員会請願審査のサムネイル

9月議会での請願審査。請願提出者の意見陳述は休憩中、請願紹介議員の陳述は委員会開催時間内の扱い。

長年の懸案だった請願・陳情提出者の意見陳述の取扱い
請願・陳情の審査は、①請願・陳情提出者の意見陳述(提出者が陳述を希望しない場合は省略)→②委員による請願・陳情提出者への質疑(陳述があった場合)→③請願・陳情の関係課による説明→④委員による関係課への質疑→⑤(委員から発議があれば)委員間討議 という流れですが、①②が休憩扱いでした。

市民参加を広げ、市民による意見表明を尊重する立場からすれば、休憩扱いにするべきでないことは明らかですが、地方自治法や標準会議規則に根拠規定がないこと、個人情報に関する発言や誹謗中傷等の発言がなされた場合の対応が難しいことなどを理由に休憩扱いに留めるべきだとの意見が根強くありました。

議員になる前、県議会・横浜市会・鎌倉市議会に請願・陳情を行い、意見陳述を行った個人的な経験からすると、意見陳述はやはり会議録に残してほしいし、残すべきだと思います。
私の周囲で請願・陳情を行った人たちも、皆同意見。意見陳述の中で「批判」はしても、誹謗中傷をすることなどありませんでした。

請願・陳情提出者の意見陳述の取扱いについては、前期(2013年5月~2017年5月)の議会改革検討委員会でも検討項目となりました。神奈川ネットは休憩扱いにしないことを主張しましたが、少数意見で終わりました。
「委員会開催内の扱いにしたいなら、陳情ではなく請願に一本化すべき」という、市民参加をむしろ狭めるような意見すら出てきたのが前期における検討でした。

今回の特別委員会の中では、議会基本条例を根拠規定とする他市の事例も参考にし、市民参加を進める趣旨を確認して、「委員会開催時間内とする」という結論に達することができました。地に足の着いた議論ができて良かったと思っています。

実際の運用は、条例改正が終わってからなので、もう少し先になります。議会運営にどんな変化が生じるか期待しています。