立地適正化計画を長期的なまちづくりに生かす ~12月議会振り返り④

一般質問で立地適正化計画を取り上げました
年の瀬も晦日となりましたが、12月議会振り返りの最終回です。
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今年6月に公布された「改正 都市再生特別措置法」には、災害ハザードエリアにおける新規立地の抑制、災害ハザードエリアからの移転の促進、居住エリアの安全確保などが盛り込まれましたが、この特措法が今回に先立つ2014年8月に改正された際に創設されたのが、立地適正化計画の制度です。

立地適正化計画は、人口減少と高齢化を背景に、財政面・経済面で持続可能な都市経営をはかることが大きな課題となったことに端を発しています。国は、医療・福祉施設、商業施設、住居等がまとまって立地し、住民が公共交通で生活利便施設等にアクセスできるように都市全体の構造を見直す『コンパクト・プラス・ネットワーク』の考えで進めていく、としています。具体的には都市機能誘導区域居住誘導区域を設定し、長期的で緩やかな都市機能と居住の誘導を図ります。
鎌倉市では、2019年から計画づくりに取りかかっており、2021年度の策定を予定しています。
策定支援業務を民間に委託していますが、所管課が主導的に関わり、鎌倉市のまちづくりの課題に向きあったものにするよう求めます。

鎌倉市の計画
鎌倉市は、都市機能誘導区域をまず設定し、次いでその周辺に居住誘導区域を設定するという進め方をしています。
都市機能誘導区域は、都市マスタープランを踏まえた案が9月議会で既に示されています。鎌倉・大船・深沢の3つの都市拠点と、生活圏を考慮した10箇所弱の身近な拠点から成ります(下図参照)。居住誘導区域については、今年度内に線引き案をまとめるとのことです。

鎌倉市は、市域が郊外へ際限なく広がる地方都市とは異なり、もともとコンパクト化した都市であり、立地適正化計画において考慮するべきなのは、防災住宅地のスポンジ化です。

 

防災・減災のまちづくりに生かす
2019年12⽉時点で⽴地適正化計画を公表している275都市について国交省が調査したところ、居住誘導区域に水害の浸水想定区域を含む都市は242都市88%に及びました。そのため、居住誘導区域にイエローゾーンを含む市町村は防災指針の作成が求められることになりました。鎌倉市も例外とはならないでしょう。siryou3.pdf (cas.go.jp)

また、災害ハザードがあることを理由に誘導区域の線引きの外になるエリアが出てきます。
計画は、長期的で緩やかな誘導を図るものなので、即生活に影響が出るものではありません。「津波防災地域づくり法」に基づく津波災害警戒区域の指定や、「土砂災害防止法」に基づく急傾斜地の土砂災害特別警戒区域の指定も同様ですが、災害ハザードが見える化することにより、具体的な減災対策や的確な避難行動が可能になります。
区域の設定・指定については、住民にその意図を丁寧に説明することが重要です。

誘導区域外では、一定の開発行為及び建築行為が届出の対象になります。災害ハザードを理由に誘導区域外となっている場合は、防災面を強化した宅地開発を求めたり、区域内に変更すると受けられる支援などを紹介したりすることになるので、届け出の受付窓口の機能は重要です。
開発や建築の計画が固まる前の段階での相談の受付けや情報提供の機能を併せもつようにすることを提案しました。

 

都市のスポンジ化を予防する
国交省は、都市のスポンジ化を「都市の内部において、空き地・空き家等の低未利用の空間が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダム性をもって、相当程度の分量で発生する現象」と定義し、コンパクトシティを進める上での支障となる現象と捉えています。

鎌倉市には丘陵住宅地と呼びうる斜面地住宅団地が、大規模なものだけでも6箇所あり、現在は良好な住環境を保っていますが、その中には高齢化率が市の平均よりもだいぶ高いところもあります。そうした住宅団地に限るものではありませんが、都市のスポンジ化は、鎌倉市においても対策が必要な現象として考えておくべきものです。

公共交通・コミュニティ交通によるアクセスの維持・確保や、住宅地の店舗・商業施設の撤退防止は立地適正化計画においても重要なファクターです。
それに加えて、地域の公共空間や低未利用のスペースを人々の居場所として活用するプレイスメイキングによって地域の活力を維持し、魅力を高めることを提案しました。プレイスメイキングのような分野でこそ公民連携が望まれます!

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プレイスメイキングの例
横浜市の築50年の団地の再生を広場の整備とそこで様々なアクティビティを生み出すことによってはかった事例
大学の都市デザイン系研究室の学生・民間企業の実務者・市役所の若手職員が「小田原ラボラトリー」という任意団体を作り、まち探検的に動き回って様々な空間と運営のデザインを実験的に行っている事例 など