急速に進む自治体DX? そしてスマートシティ

6月議会の終盤は、難民政策の見直しを求める意見書提出の準備に追われました。すっかり遅くなってしまった6月議会報告を複数回に分けて掲載します。
先ずは一般質問です。

21.6.18一般質問

DX(デジタル化による変革)に国は邁進、鎌倉市も邁進
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「デジタル技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、菅政権はDX推進を旗印にし、先の通常国会でデジタル改革関連法が成立、9月にはデジタル庁が発足します。

自治体関連では、昨年12月に総務省が自治体DX推進計画を取りまとめています。
同計画の重点取組事項としては 自治体の情報システムの標準化・共通化 マイナンバーカードの普及促進 行政手続のオンライン化 AI・RPAの利用推進 テレワークの推進  セキュリティ対策の徹底 があがっています。

総務省は、この夏には「自治体 DX推進手順書」も提示する予定で、自治体は否応なくDXを進めていくことになります。

自治体システムの標準化・共通化
国が進めるシステムの標準化・共通化がサービスの標準化・共通化になることを懸念して、 例えば「子ども子育て支援」のシステムの標準化・共通化によって鎌倉市が独自の施策を講じるのに支障が来さないのか、と質問しました。

部長の答えは、「国がシステムのカスタマイズを認めない方針であるのは確かだが、ツールの活用でカスタマイズよりも低いレベルで対応し、市の独自取組ができなくならないようにする」というものでした。

システムの標準化・共通化は、根本において地方自治を弱めるものです。その認識をもった上で、国が進める大きな流れに対処していくことを求めました。

マイナンバーカード普及加速化の背景
鎌倉市民のマイナンバーカード取得率は、2020年7月段階では23.3%(県内自治体で最も高率)でした。それが2021年5月末には36.2%へと大幅増、申請済みで交付を待つ人を含む申請率では、通算50%に達しました。

長らく低迷していたマイナンバーカードの取得率がここにきて全国的に大幅増となったのは、5000円分のポイントが還元されるマイナポイント付与やQRコード付き申請用紙の個別送付など、国がなりふり構わずにカード普及をはかったからです。

マイナンバーカードを健康保険証の代わりに使えるようにする制度運用は、システムトラブルが続出したことで延期になりました。そもそも、マイナンバーカードを保険証に使えるようにしても受診者の利便性は大きく向上しませんが、国は仕切り直して健康保険証の代わりに使えるようにし、カードの取得をいっそう促す構えです。
マイナンバーカードの運転免許証との一体化も検討されています

カードの公的個人認証機能の多様化
マイナンバーカードの券面の表側が、「写真付き本人確認証」として使われるのに対し、裏側のICチップには、電子的に個人を認証する「電子証明書機能」が備わっています(下記の表を参照)。今後は、ログインした者がその人であることを証明する利用者証明用電子証明書の用途が急速に広がることが予想されます。

結果的にカードの電子証明書機能に紐づけられる個人情報は行政利用・民間利用を含めてどんどん増えていき、個人情報が侵害される危険度も増すと言えないでしょうか。

2019年度「個人情報保護委員会年次報告」によれば、マイナンバー関係の個人情報流出・漏洩報告は1年間で217件に及ぶとのことです(出典:雑誌『世界』2021年1月号)。
カードの取得者数も用途も限られていた2019年度の報告件数としては決して看過できません。
この問題を軽視して、マイナンバーカードの普及や行政DXが進められているのが現状です。そしてもっと気になるのは、将来的に制度が濫用されることはない、と言い切れないことです。

今年度中に策定される鎌倉市スマートシティ構想
鎌倉市は、内閣府による「スーパーシティ型国家戦略特別区域」の指定に手をあげました。現在その特区指定の選考結果を待っています。

スマートシティの取組を加速させるものとしてスーパーシティに取組んでおり、スーパーシティに区域指定されてもされなくても、鎌倉市のまちづくりとしてスマートシティに向けた歩みを続けるとのことです。

2021年4月、内閣府がスマートシティガイドブックを公表しました。
国が考えるスマートシティのコンセプトが、これまで以上に明確に示されており、「スーパーシティの規制緩和抜き版」という印象です。
「都市OS(データ連携基盤)の導入」も明記されています。
  スーパーシティに指定された自治体では、行政や金融、医療など複数の機関で別々に管理されている個人情報を官民で共有して活用するが、それを集約するのが「データ連携基盤」

2月議会では、つくば市の「スマートシティ倫理原則」を取上げ、個人データを含む諸々のデータと先端技術を活用してスマートシティを目指すのであれば、個人の権利(個人情報)や自由を守るルールが必要性ではないか、と質しました。
6月議会においてもデータガバナンス(データの運用ルール)が重要であることを指摘しました。

その際、「データに対する政府のガバナンスが働いていることを制度的に担保すべきだ(マイナンバーカードの普及も自治体システムの標準化もデータの活用も、国民に『政府がデータを勝手に使うのではないか』という不信感を持たれるようではうまく進まない)」という武蔵大学の庄司昌彦教授の発言(『なぜデジタル政府は失敗し続けるのか』日経コンピュータ)を引用しました。

同時に紹介したのは、バルセロナ市の取組みです。
同市は2015年に新しい市長が誕生し、それまでの技術導入に重点が置かれていたスマートシティ計画を根本から変えました。データは市民に属するという考え方のもと、「City OS」というプラットフォームをベースにデータを公開し、市民のまちづくりへの参加を広げています。
「データは市民に属する」というところが重要です。

本人同意(オプトイン)を前提にした個人情報の取得・提供?
3月に行われた鎌倉スーパーシティオンライン市民説明会では、個人データの取扱いについて、次のような説明がされています。
情報の提供・開示には、
オプトイン…「自分のこの情報を提供してもよい」と合意できるもののみを、目的を限定して情報提供を行う
オプトアウト…データをとることが前提で、同意しない場合は申し出る
の考え方があり、鎌倉市がスーパーシティ・スマートシティに取組むにあたっては、「オプトイン」の考え方を中心に進めていく
これは確かにオプトインでやるべきだと思います。

加えて重要なのは、個人非識別情報の再識別の禁止。
スーパーシティにおいては、移動・活動・商品購入などの個人情報がデータ連携基盤に集積され、民間の利用にも供されることになります。
一般質問では、「個人を識別せずに収集した個人情報」や「収集後に個人を識別しないように加工した情報」を再び識別することを法的に禁じることの必要性も指摘しました。

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果たして鎌倉市はスーパーシティに区域指定されるのか?!また、今年度中に策定されるスマートシティ構想にもご注目ください。

一般質問の録画はこちら 鎌倉市議会 録画配信 (gijiroku.com)
 質問は1時間(最後の15分間はGIGAスクールについてです)