鎌倉市生涯学習センターに指定管理者?!

鎌倉市の生涯学習センター6施設の利用区分と利用料を見直し、これまでの市直営をやめて「指定管理者制度」を導入するための生涯学習センター条例の改正議案が12月議会に議案上程されています。
条例の施行期日は2022年10月とされており、今議会で可決すると、予約システム改修の業務委託の準備に入り、指定管理者の公募を経て来年6月議会には指定管理者の指定議案がかかるものと思われます。

条例改正議案は、12月8日の教育福祉常任委員会において3対3の賛否同数で委員長裁決により可決、17日の最終本会議で採決が行われます。
常任委員会では僅差の可決でした。本会議でも同様の結果になってしまうのか、大変気がかりです。

指定管理者制度とは
2003年の地方自治法の改正で、市が指定する団体(=指定管理者)に公の施設の管理運営を行わせることができるようになり、民間事業者の参入に門戸が開かれました。指定管理者は、施設の利用許可などの行政処分も行うことができます。

市は指定管理者を公募し、外部委員による指定管理者選定委員会が審査および選定を行います。指定期間は3年間、5年、10年と施設によって様々です。
「民営化」といっても施設は市有のままで、指定管理料を支払って管理運営を委託するものです。

例をあげると、2021年12月現在、鎌倉芸術館はサントリーパブリシティー、文学館と鏑木清方美術館は鎌倉芸術文化振興財団、川喜多映画記念館は川喜多記念財団、鎌倉体育館はコナミスポーツのグループ、NPOセンターはNPO法人鎌倉市市民活動センター運営会議が指定管理者です。

条例改正で大きく変わる施設運営
利用区分は次のように変わり、利用者に大きく影響します。
【集会室】
現 行  : 午前3時間・午後および夜間4時間の3区分/入替え時間1時間ずつ
改正後: 基本2時間単位の6区分(21時~は1時間)、入れ替え時間30分
【ホール】
現 行  : 午前3時間・午後および夜間4時間の3区分/入替え時間1時間ずつ
改正後: 午後の時間帯が4時間から3時間に

利用料金は、「公の施設の使用料等の算定基準」(2021年2月策定、11月改定)に基づき時間単価が6施設平均 1.2 倍の引上げになっています。
生涯学習課の「時間単価は引き上げるが、利用区分が3時間から2時間に短くなっているので実際に支払っていただく金額は少なくなる」という説明には、利用者が強く反発しています。

そして、3つ目の大きな変更が指定管理者制度の導入です。

市が説明する生涯学習センターの課題とは?
市は、今年の6月8日~7月9日に無作為抽出2000件(郵送)と窓口配架600件を対象にアンケート調査を行い、569人から回答を得ました。その結果見えてきた生涯学習センターの課題を次のようにまとめています。

利用区分を見直して指定管理者制度を導入するのは、これらの改善すべき課題を解決するためである、と市は説明しています。

今回の条例改正議案の何が問題か
これまでの施設利用者から意見を聴取せず、無作為抽出アンケートの結果を分析して見直し案を検討したことが、真っ先に問われるべき問題です。
頻繁に、あるいは定期的に生涯学習センターを利用する市民の声を意図的に聞かないようにした可能性があります。

施設利用者の意見を封じて利用区分の見直しをしたため、極めて使いづらい時間帯の設定になっています。
例えば、午前中に会議や学習会で集会室を使うなら、前後に準備と片付けを入れて10時~12時を開催時間にするのが普通ですが、見直し後の利用区分では9時~11時、11時半~13時半の2コマを押さえないとそのように使えません。
ホールの利用時間が、これまでは午後が13~17時、夜が18~22時だったのが、午後13~16時、夜17~21時に変更になることに対しても、音楽団体等から、「演奏会の一般的な開催時間にあっていない」という批判が寄せられています。

指定管理者制度を導入する理由が不明確です。
館長は「指定管理者による管理運営に移行しても、大幅な経費削減にはならない」と答弁しました。経費削減が一番の導入目的でないとしたら、何のための導入でしょうか。

「施設の管理運営は指定管理者が行うようになるが、社会教育事業については、これまでどおり生涯学習課が執り行う」との答弁もありました。
「現役・若者世代のニーズに即した講座やオンライン講座の開催が、現在の体制ではできないが、指定管理者ならできる」とする理由の説明が必要です。

生涯学習センターは「公の施設」です(市役所庁舎は「公の施設」ではありません)。
地方自治法は、「公の施設」を次のように定めています。
第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

株式会社等が指定管理者になっても、施設の利用許可をみだりに制限することはできません。その点は過度に心配する必要はないと思います。

一方、「生涯学習センターに指定管理者制度を導入しないことを求める陳情」の提出者が、陳情付託先の教育福祉常任委員会で意見陳述を行った際に紹介されていたスポーツ施設の指定管理の現状は示唆的でした。

指定管理者が市に企画・提案して指定管理業務の中に位置づけられた事業なのか指定管理者による自主事業なのかは不明ですが、そのスポーツ施設では、指定管理者が企画・実施するプログラムによって、市民が自由に施設を利用できる枠が狭められてしまい、市民から苦情が出ているというのです。
指定管理者制度の導入によって市民サービスの低下が見られる実例です。

生涯学習センターの指定管理者として相応しい受皿(団体・事業者)があるのか、どのような仕様書を作れば市民サービスの向上につながるのか、といった検討は丁寧に行うべきです。

システム改修の業務委託がスムーズにいくように、12月議会の補正予算で債務負担行為(契約は年度内に行うが実際の支出は翌年度以降に見込まれるものを、議決により設定すること)を通すために急いでいるようにしか見えません。条例が成立してから利用者や市民に「説明」をしても、利用区分や料金は既に変更になった後です。

生涯学習についての鎌倉市のヴィジョンが見えない条例改正であること、当事者の意見を聞かない非民主的な進め方であることにはどうしても納得がいきません。
17日の最終本会議では、議案に対する反対討論を行うつもりです。