文化系5館の市民の観覧料を無料にする条例改正

12月議会では生涯学習センター条例改正議案に注目が集まっていますが、もう1件、公の施設の運営に関わる議案が提案されています。
鎌倉国宝館・鎌倉文学館・鏑木清方記念美術館・川喜多映画記念館・鎌倉歴史文化交流館(以上、文化系5館)の観覧料、鎌倉青少年会館・玉縄青少年会館の施設使用料を変更しようとする議案第65号です。

国宝館と鏑木清方美術館の観覧料が30円~100円値上げされますが、文化系5館共通で、鎌倉市民の観覧料は無料になります。
青少年会館は、1時間当たりの研修室や会議室などの使用料が50円~300円の値上げになります(青少年団体や子ども会はこれまでどおり減免)。

議案第65号は、12月13日開催の総務常任委員会において総員挙手で可決しました。
開館以来ずっと据え置きのままだった鏑木清方美術館の観覧料(一般200円)をようやく100円値上げする内容も含まれることから、私も賛成しました。
青少年会館の使用料の改定については、11月に登録団体に通知したとのことです。

鶴岡八幡宮境内の鎌倉国宝館

唐突感があった「市民は無料」
総務常任委員会の質疑で問題にしたのは、文化系5館の市民の観覧料を無料にすることについてです。

「もっと沢山の市民に来てもらいたい」という意図はわかりますし、私も同感です。大河ドラマ館を訪れた人が、ドラマの世界だけでなく鎌倉の歴史や文物に触れるために国宝館を訪ねてくれるのは歓迎ですし、歴史文化交流館の来館者が伸び悩んでいるのを何とかしたいとも思います。

しかし、唐突に「市民は無料」を打ち出した理由が今一つはっきりしません。

鎌倉市は、公共施設の使用料等の統一的な基準がなく、施設毎に金額や改定の頻度に差があるのを課題と捉え、受益と負担の公平性や公正性を確保した合理的な料金設定を行うことをうたって「公の施設における使用料等の算定基準」を今年2月に策定しました。この算定基準(金額設定の考え方)については、財政課による説明が早い時期からありました。

でも、「算定基準」を2月に策定した時点では、文化系施設における市民の観覧料無料についての記載はありませんでした。算定基準はつい最近(11月)に一部改定されており、「市民は無料」も、そこで追加記載されたのです(下記参照)。

問題となっている生涯学習センター条例の改正案に関しても、利用料と不可分の利用時間帯の区分変更の方は、議案になって初めて知らされました。
ともに、算定基準作りの中では表に出てこなかった要素が後になって加わっているのです。

指定管理者にはリスク分担金を支払えばよい?
また、質疑を通してわかったのは、指定管理者が管理運営をしている3館(文学館、鏑木美術館、川喜多記念館)の指定管理者に対し、「市民は無料」という条例改正内容を文書をもって正式に通知し、その影響や対応策について事前に協議することなく議案を出してきていることでした。

小町通りの喧騒とは別世界の鏑木清方美術館

5館の入館者のうちの鎌倉市民の比率は10 ~20%で、市は無料化による減収を600万円~1000万円と見込んでいます。指定管理の3館については、市民の入館者をカウントしてもらい、その実績値に基づき各館の減収分を「リスク分担金」として指定管理者に支払うとの答弁でした。この減収補填の仕方についても、指定管理者への事前説明はしていないようでした。

市民の観覧料を無料にすると、観覧以外の目的で入館者が増えることが予想されます。市民が散歩や買い物の途中などに気軽に立ち寄れるようになるのはよいことですが、観覧目的で料金を払ってきている人の妨げになったり、施設管理上不適切な状況が生じたりしないように対応策を考えておく必要があります。
その意味でも、条例改正案を議会にかける前に指定管理者および直営施設の現場の管理者に説明し、協議する場を設けなかったことには首をかしげざるを得ません。
文化系施設を軽く考えているような文化課の姿勢は残念です。

川喜多映画記念館(庭内に景観重要建造物 旧和辻哲郎邸:春と秋に一般公開)