生涯学習センター条例の改正議案が僅差で可決

鎌倉市議会12月定例会の最終日の本会議で、生涯学習センターの利用料金と利用時間帯区分を変更し、指定管理者制度の導入をはかる条例改正議案が僅差で可決しました。採決に先立ち、高野議員、保坂、竹田議員が反対討論をしました。

私の反対討論は、以下のとおりです。生涯学習センターの所管は教育文化財部生涯学習課ですので、「市」とあるのは「市教委」なのですが、市長が主導したと認識していることから「市」と述べています。

反対討論
利用者のニーズを無視した利用区分の変更
市は、今年の6月から7月にかけて、生涯学習センターについてのアンケート調査を行いました。調査の規模は無作為抽出2000件と窓口配架600件で、569人から回答を得て、その結果見えてきた課題の解決に向けて、今回提案の条例改正を行うとのことです。

なぜ、定期的あるいは頻繁に生涯学習センターを利用する市民の意見を聞かなかったのでしょうか。
聞いていたなら、条例改正案にあるような利用者の使い勝手を考えない利用区分の変更は、提案できなかったと思います。

集会室の利用区分が、基本2時間単位の6区分、入れ替え時間30分とされたのは驚きでした。
例えば、午前中に会議や集会を持つ場合、9時半開場、10時~12時開催が一般的です。9時~11時という利用区分では、次の時間枠の11時半~13時半も押さえなくてはなりません。

利用料金の時間単価は6施設平均 1.2 倍の引上げになっています。
生涯学習課は「時間単価は引き上げるが、利用区分が3時間から2時間に短くなっているので実際に支払っていただく金額は少なくなる」と述べています。
利用者は、時間的に余裕のない利用か、料金の負担増かのいずれかを強いられることになります。
ホールの利用時間が、これまで午後は13時~17時、夜は18時~22時だったのが、午後が13時~16時、夜が17時~21時に変更になることに対しても、音楽団体等から、「演奏会の一般的な開催時間にあっていない」という批判が寄せられています。

指定管理者制度の導入
日頃生涯学習センターを利用している市民の意見を事前に聞かず、利用区分の変更などで、実質的なサービス低下の恐れがあることに加え、指定管理者制度を導入する理由が不明確であることも大きな問題です。
改正条例が成立すれば、2022年10 月1日から施設の維持管理および運営を指定管理者に行わせることができるようになります。

教育福祉常任委員会の議案質疑では「指定管理者による管理運営に移行しても、大幅な経費削減にはならない」という趣旨の答弁がありました。
「現役・若者世代のニーズに即した講座やオンライン講座の開催、夜の時間帯のスタッフの配置が、現在の体制ではできないが、指定管理者ならできる」という説明もありました。
しかし、現在の直営体制で工夫の余地はないのでしょうか。
また指定管理になれば、市が課題と考えているこれらの事柄が民間事業者により解決される確かな見通しはあるのでしょうか。

陳情提出者の委員会での意見陳述では、指定管理者制度が導入されたスポーツ施設で、事業者が企画・実施するプログラムによって、市民が自由に施設を利用できる枠が狭められてしまい、市民から苦情が出ている事例も紹介されました。

夜間の利用者が少ないことが課題だと言うが…

大規模な事業展開をしている民間に任せれば済む問題ではない
私は、社会教育施設に指定管理者制度を導入すべきではないという原則論には立ちませんが、全国展開をしている大規模な事業者に任せれば済むものとも思っておりません。
生涯学習センターの指定管理者として相応しい団体・事業者があるのか、どのような仕様書を作れば課題の解決と市民サービスの向上につながるのか、といった検討を丁寧に行った上での条例提案であるべきで、「施設運営上の課題が見えてきたから、指定管理者制度に移行させる」という短絡的なものではないはずです。

鎌倉市は、新庁舎等の整備及び現庁舎跡地の利活用に向けた取組みを行政計画に位置づけています。
現在地には行政の窓口機能と共に市民活動や文化発信の拠点となる施設を整備するとのことです。そうした施設が整備された場合には、生涯学習や市民活動支援を行う公益財団法人や組織力のあるNPO法人等がそこに事務所を置き、当該施設および市内の市民利用施設の指定管理も担うという展開も考えられるのではないでしょうか。
市職員の出向などによる人事交流も検討しうるものと認識します。 

たとえば、
武蔵野市では、公益財団法人「武蔵野生涯学習振興事業団」が図書館・生涯学習支援・ 市民活動支援・青少年活動支援の4つの機能を併せ持った複合機能施設「武蔵野プレイス」や総合体育館などの体育施設の指定管理者になっています。

県内でも横須賀市や川崎市には生涯学習財団があり、川崎市生涯学習財団は、長年不登校の子ども達の居場所づくりをしてきた「NPO法人 フリースペースたまりば」と共同事業体を組んで、「川崎市子ども夢パーク」という子どもの権利条約の理念に基づいた施設を管理・運営しています。

総務常任委員会で視察に行ったにアオーレ長岡は、市役所本庁舎と市民交流の拠点であるシティホールプラザの合築で、シティホールプラザの方は「 NPO法人ながおか未来創造ネットワーク」が指定管理者制度でも市の直営でもない市民参加型の運営をしていました。

生涯学習についての長期的ビジョンがないことが最大の問題
将来的にそのような選択肢は絶対にない、とは言えないと思います。全く新しい公益財団法人をつくるのではなく、既存の団体の統合・改変なども考えられます。

今、指定管理者制度を導入すれば、目の前の困りごとは部分的には改善するかもしれません。しかし、そこからは「生涯学習環境の整備・充実」にかかる市の大きなビジョンは感じ取れません。
市は、改正条例成立後に市民や使用団体に説明すると言っていますが、利用区分と利用料金の変更を決定した後で説明してどうしようと言うのか理解に苦しみます。
この条例改正を急いではいけないと考えます。