新庁舎整備の基本計画と市庁舎現在地利活用の基本構想の素案~ 説明会は低調ですが…

新庁舎等整備基本計画と市庁舎現在地利活用基本構想の素案についてのパブコメ
鎌倉市は、2019年7月に策定した「鎌倉市本庁舎等整備基本構想」を踏まえて検討してきた「鎌倉市新庁舎等整備基本計画(素案)」を取りまとめ、「市庁舎現在地利活用基本構想(素案)」とともに6月11日~7月10日の1カ月間、意見公募手続き(パブリックコメント)を実施しています。

広報かまくら3月号で深沢新庁舎と鎌倉の市役所現在地を「人・まち・地域がつながる2つの拠点」と位置づけた特集記事を組んだのに引き続き、6月号には両素案の内容紹介とパブコメ実施の特集記事が掲載されています。

パブコメ期間中、素案の内容を市長が紹介する説明会が市内5地域で2回ずつ開催されています。私は、6月19日午後の大船会場と22日夜の鎌倉会場の2回の説明会に参加しましたが、参加者はいずれも10~12人程度でした。

(これはHPトップの画像です)

市民の反応は…
説明会の参加者が少ない理由として考えられるのは、開催が市民に十分知られていないこと。
広報かまくら6月号の記事には開催日時・場所の一覧が載っておらず、ホームページを見るように書かれています。広報かまくらの発行が月2回から1回の発行に変更され、必要な情報がタイムリーに届かないのは残念です。経費がかかっても、臨時号を発行するくらいのことをやってもよかったと思います。

別の理由としては、基本計画等の中身について「知る必要がない」と考えている市民が多いということなのでしょうか。
「新庁舎を深沢で整備することに反対なので、具体的な中身の話は聞きたくない」「新庁舎移転はできるわけがないので、具体的な中身の話を聞く意味がない」と考えている人もいれば、逆に「市は新庁舎を深沢で整備することを決めたと言っているのだから、それ以上のことは聞かなくてもよい」という人もいるのかもしれません。

市役所の位置を定める条例
2番目に挙げた理由に関連して、「市役所の位置を定める条例」の改正のタイミングの問題があります。広報かまくら6月号の1面の下段には、市役所の位置については、地方自治法第4条第1項により、条例で定めると規定されており、本市では「鎌倉市役所の位置を定める条例」でその位置を制定しています。市役所の位置の変更に際しては、当該条例改正の議会の議決が必要ですが、その時期は現在検討中です とあります。

この議決は、出席議員の過半数ではなく、3分の2以上の賛成を必要とする特別議決とされており、26人全員が出席であれば18人の賛成が可決ラインです。

一方、議決の時期については地方自治法上の定めはありません。
昨年6月議会の建設常任委員会において、所管課は「事業費の概算がわからないうちに条例を提案するのは適切ではないという先例があり、市としては、少なくとも、基本計画の中で事業費の概算が出て以降だと考えている。ただ、『以降』と言っても(採用する)事業手法によって、どのようなステップで着工に至るかが変わってくるので、(条例改正を議会に提案する)具体的なタイミングは今の段階では想定できない」と答えました。

「事業費の概算が出て以降」ということならば、パブコメ中の基本計画(素案)には、施設整備費(工事、外構、調査・設計、備品、移転費用)として「約170億円」という概算費用が示されており、パブコメ実施後の今秋には基本計画の策定に進みます。
しかし、先週行われた建設常任委員会では、位置条例の提案時期について「基本計画を策定し、その後に設計に当たる事業者を公募により選定する。設計を行う中で金額が明らかになっていくので、そうやって予算がわかってきた段階で提案を行うべきだと思っている」という部長答弁がありました。1年前の回答に「設計に基づく事業費がある程度明らかになってから」ということが付け足された形です。

順番が逆なのかどうか
パブコメ素案説明会(大船会場)では、参加者の1人から「新庁舎の位置を決める条例が議会で通ってから基本計画を作るべきであって、そもそも順番が逆ではないか」という指摘がありました。この発言に限らず、「位置条例の改正案を議会にかけないで、移転による整備計画をどんどん進めるのはおかしい」という批判の声は多いと思います。

批判の理由には
①「議会の3分の2以上の賛成によって深沢を市役所の位置と決める条例を可決させることは難しい。議会の議決を先に延ばして計画を進めた挙句に頓挫すれば、計画遂行で使った市費は無駄になる。早く条例案を議会にかけて白黒をつけるべきだ」という考えもあれば、
②「位置条例の議決を後回しにして、設計完了、着工と進めて移転を既成事実化した後になし崩し的に位置条例の改正に持っていくのではないか」という疑心暗鬼もあると推察します。

しかし、市の説明からすれば、少なくとも②という線はないことになります(これまでの説明をよく覚えておくことにしましょう!)。

そして、①の「議会の3分の2以上の賛成による条例可決」については、「できっこない」説を拡散することに熱心な人たちもいますが、賛成と反対の間で判断を留保している議員、新庁舎整備計画と現在地利活用の中身次第だと考えている議員もいます。

深沢に新庁舎を整備することの問題点(例えば、交通事情、経費、まちづくり上の問題)を指摘した「できっこない」はいくらでも唱えてもらい、議論が深まることが大事ですが、議論封じのための「できっこない」説は市政をよい方向に持っていくものではありません。

新庁舎等整備基本計画と市庁舎現在地利活用基本構想の素案が提示されたこの折に、疑問や批判も含めた意見をできるだけ多くの方から出していただきたいと思います。
予定された説明会は残すところ2回になってしまいましたが、意見募集(パブコメ)の期間は7月10日迄で、まだ半月あります。
鎌倉市/鎌倉市新庁舎等整備基本計画(素案)及び鎌倉市市庁舎現在地利活用基本構想(素案)への意見募集について (city.kamakura.kanagawa.jp)

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建設委員会(6月17日)で行った両素案についての質疑と、これからパブリックコメントとして送付する意見については、別だての記事として後日報告します。