生涯学習センター指定管理者の指定議案と陳情審査 (6月議会 振り返り③)

6月議会には、議案第7号として、鎌倉市生涯学習センターの指定管理者として鎌倉CITYパートナーズ(構成団体:相鉄企業(株)、(株)小学館集英社プロダクション)を指定する議案がかかっています。

6月13日の本会議で議案上程された際に私が行った議案質疑と、議案が付託された教育福祉常任委員会(同15日)で会派の井上三華子議員が行った質疑から主なものを紹介します(教育文化財部長・生涯学習課長の答弁は、市議会の中継録画から要点筆記)。議案の採決は、明日28日の最終本会議です。

公開プレゼンテーションの傍聴で抱いた疑問点を質問(6/13本会議)
Q
(保坂、以下同)指定管理者の公募に対し提案書を提出し、公開プレゼンテーションに参加したのは2事業者(鎌倉C ITYパートナーズと他の1社)だったが、提案事業者が少なかったという認識はあるか。

A 現場説明会には、生涯学習事業が主体および施設管理が主体の事業者計11社が参加。(最終的な)応募団体2事業者からは社会教育事業についての質的向上や量的拡大が見込める十分な提案があり、特段提案が少なかったという認識はない。

Q プレゼンの後に行われたヒアリングでは、選定委員会委員長・副委員長から提案事業者に次のような質問があった。
▽提案の発想の中心が講座の開催になっているが、元々は公民館だった施設である。市民活動を支援する相談体制の充実ははかられるのか。
▽「施設は人なり」である。地域住民の頼りになるような運営を目指し、経験豊かな人の配置はされるのか。
▽講座は、子どもや若い世代ばかりを対象にするのではなく、利用ニーズが大きい高齢世代への対応も必要で、全世代にわたる企画をしてほしいがどうか。
▽指定管理者として老朽化した建物や設備の維持管理を行っていくにあたり、市との協議をきめ細かく行う必要性を認識しているか。
部長はヒアリングで示された選考委員会の問題意識に対し、どのように感じたか。

A 本市の生涯学習センターの役割や利用者の求める事柄を的確に捉えつつ、応募団体の生涯学習センターの課題解決に向けた取組み姿勢等を確認していただいたと考えている。

Q 提案事業者には、プレゼンで取り上げる「5つの課題」が示された。それらは、生涯学習センターの管理運営上、本当に最重要な課題だったか、それとも指定管理者制度への移行の理由付けとして、民間の事業者のノウハウをもってすると解決策を提示しやすいものをピックアップしたものだったのか、が問われている。
例えば、5つの課題の1つに「夜間職員不在により相談体制等が脆弱」ということが上がっているが、市民グループから活動の中身や会場の予約等についての相談のニーズが果たしてあるのか。

A 職員が夜間に活動する団体に積極的に声かけすることもできれば、よりよい施設運営や事業展開のきっかけになると期待する。利用料金の支払いについても夜間におけるニーズはあり、夜間に職員を配置することで多忙な世代にとっても利用しやすい施設になっていくと考える。

Q 「現役・若年世代の利用率が低い」という課題も提示された。その原因として挙がった「参加したい時間・手法・テーマの講座がない」に対して、事業者が解決策として示した講座の企画などについて、選考委員から「子どもと若い世代にシフトし過ぎるのはいかがなものか」という意見が出された。
提案事業者の得意分野のコンテンツはアニメ関連であったりもする。しかも、県内外で多くの生涯学習施設の指定管理者になっており、プログラム・企画のメニューやノウハウは豊富に持っていると思うものの、それを横展開されるようなことになれば、鎌倉市の生涯学習センターの運営としてよいのだろうか。

A 鎌倉CITYパートナーズの全体の事業計画の中では、講座をきっかけに同じ趣味や関心を持つ人をつなげ、新たな地域との繋がりをつくるサークル化の推進や 鎌倉市の地域特性を活用した学習機会の提供 防災やフードロスなどに対する市民の関心の高さなどを踏まえた鎌倉らしい企画や事業提案 がなされており、若年層を主な対象とした事業展開に特化したものではないと考える。
プレゼン後の選考委員会では、若年・現役世代に向けた取組みが期待され、かつ将来的には全世代に向けた取組みや地域ごとの特性に応えた取組みが期待されることから指定管理者に相応しいという結論が出されたと受けとめている。

 

教育福祉常任委員会での質疑(6/15)
Q(井上委員 以下同)指定管理者の候補者となった鎌倉CITYパートナーズが、優れていると評価された決め手はどんなことか。

A 利用団体等に属さず、現状で施設利用していない人も対象に入れた広い視点での事業展開、サテライトやオンランとの併用などの講座運営も期待。講座を通して人と人をつなぎ、地域のサークル活動を支援し、自主事業として予約の入っていない部屋を自習室として無料で利用できるようにするなどの提案も評価。

Q 今年1月に生涯学習センター登録団体を対象に行ったアンケートには、「指定管理者の選定に向けた仕様書に御意見等をできる限り反映させていくため、アンケート調査を実施いたします」と書かれていたが仕様書にはどのように反映したのか。

A アンケ―トで寄せられた 利用団体の登録や講座申込みの簡便化 鎌倉生涯学習センターの1階ロビーの活用 新しい視点を取り入れた講座 夜間利用の方が次回の利用料金の支払いできるようにする夜間の職員配置利用団体等との懇談会の開催 といった意見の仕様書への反映に努めた。

Q 指定管理者による自主事業については、「指定管理者は、学習センターを利用して、学習センターの設置目的に適合する範囲において、自らの企画による講座等の企画・誘致を行い、自らの収入にすることができる」ことになっている。
市民による主体的な活動の
場を提供することが生涯学習センターの役割としては大変重要であるので、自主事業によって市民の貸室の利用枠にしわ寄せがくるようなことがあってはならないが、このことは明確化されているか。

A(課長) 自主事業の内容には基準があり、また生涯学習課に相談することも定めている。事業者の提案書を見ても、若者世代の夜間の利用を促進するために、自主事業と位置付けたフリースペースの提供で来館を促し、その後の開設講座への参加やサークル活動に発展した際の貸室利用につなげることが書かれている。若年層・現役世代に施設を知ってもらうための取組みから始め、裾野を広げることが意図されている。
A(部長) 自主事業により貸館の枠が減って利用者が使えなくなることを危惧されているのかと思うが、貸出対象施設(集会室やホール)は、利用団体による利用が優先し、空いている枠で生涯学習推進委員会による講座をやる。自主事業は、それでもなお空いている施設(使用日の2カ月前になっても使用許可申請がなされていない施設)において実施してよい、と仕様書に明記しており、指定管理者が自主事業で優先的に利用枠を押さえることはない。

 

他会派の委員からの質問への回答について
以上は、指定管理者指定議案についてネットの2人が行った質疑ですが、教育福祉常任委員会では、議案が可決して10月に指定管理者による管理運営に移行して以降に、懸案の利用区分の検証(→再見直しも)はどうなるのか、という質問が他会派の委員からありました。

Q 新しい利用区分による管理運営が10月からスタートする。それを条例も含めて見直すべき時期があるかと思うが、そのあたりの見通しは立てているのか。

A(課長)予約の取りやすさの検証、利用実態の把握は必要であろう。一定の期間経過後、半年が適切か年が適切かということはあるが、指定管理が実際に始まった中で、指定管理者と協議しながら検討を進めていきたい。
A(部長)指定管理候補者からは、利用者ご意見箱の設置や利用者懇談会といった提案も出されているところである。教育委員会だけで「半年後」などと期限を決めるのではなく、利用実態の把握や利用者意見を指定管理者に吸い上げてもらった上で判断を行っていきたい。

この利用区分の検証にかかる答弁については、3月18日の本会議で可決した付帯決議が「10月1日から半年を経た時点で」「利用者及び利用団体においては漏れなく、また、一定数の未利用の市民も対象に」アンケート調査を必ず行い、「利用区分の再度の変更が必要であると判断された場合は、できる限り速やかに変更を行うことを求める」ものであることを十分に受けとめていないものだと言わざるをえません。
利用実態の把握が指定管理者を通して行うことになるのは理解します、下線部を考慮すれば、全体としての意見の吸上げは市教委が責任をもって行うべきものと考えます。

鎌倉生涯学習センター フェスティバル(22.6.26)

陳情の取り扱いについて

6月15日の教育福祉常任委員会には、前年度の3月24日に提出された「令和3年度陳情48号~65号」が審査付託されました。
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18本の陳情は、3月18日の定例会最終日に可決した、議員提出の『議会議案第12号』に対し、市長が異議アリとして再議に付したために3月25日に開催された「3月臨時会」に際し、「生涯学習センターの利用区分を前年12月の条例改正以前の区分に戻した議会議案12号を否決しない」ように求めたものでした。

本会議の前に持たれた議会運営委員会(議運)で18本の陳情の取り扱いが協議されました。
議会ルールでは「陳情(請願も同じ)を直近の定例会で審査させるには、定例会開会日の前日が受付期限で、受付期限を過ぎて提出された場合は、次回定例会での審査となる」とされており、定例会でない臨時会に向けて出された陳情は、このルールに従えば、6月定例会で審査されることになります。

議運では、「これら陳情を今この臨時会で取り扱う緊急性があるかどうか」が諮られました。その結果は、「緊急性がある」が4人、「緊急がない」が5人という僅差でしたが、陳情審査は6月定例会に持ち越すことになりました。

陳情の願意は、臨時会での議案採決についてのものでしたから、採決が終わってしまえば意味がありません。
「緊急性があるか/ないか」という形式的な諮り方ではなく、
a. 陳情を議員配付とし、本臨時会では、その願意を各議員が踏まえた上で議案採決に臨むのか
b. 本臨時会において18本の陳情の採決をしてから議案採決をするのか
― という諮り方がなされてしかるべきでした。
再議のための臨時会開催という異例の事態に際し、咄嗟の判断で諮り方に対する異を唱えることができなかったことが、議運の委員として悔やまれます。

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そして迎えた6月定例会。6月1日の議運で、18本の陳情を教育福祉常任委員会に審査付託することが決まりました。

既に再議により議会議案12号は否決、廃案となり、陳情の願意を満たすことはできないので、付託は不要である」という声もありましたが、
付託しないなら、3月臨時会において多数決で「次回定例会で扱う」とした意味がなくなる
18本の陳情の中には、議会議案12号が再議で否決されて以降も消滅しない願意を含むものがある
― などの判断による付託決定であったと思います。

常任委員会の日程(議案、報告などの議事の順)は正副委員長が事前に決め、委員会冒頭で委員に諮って確定します。
6月15日の教育福祉常任委員会では、指定管理者の指定議案が日程9、「指定議案に関して選定された事業者の法令遵守体制の検証を求める陳情」が日程10とされましたが、陳情18件はその直後の順番ではなく、3つの日程が間に入った後の、日程14~31でした。

そのような構成になった理由は、日程9・10が指定管理者の指定についての議案であるのに対し、陳情18件は生涯学習センターの管理運営(利用区分)についてのものであるから、という整理でした。
18件のうち2件の陳情については提出者から意見陳述の申出がありました。そのお2人の陳情者には陳述まで長時間の待機を強いてしまい、かつ日程構成の趣旨が十分伝わらなかったのは、大変申し訳ないことでした。

ただ、陳情審査を日程9・10の前に持ってくるべきだったかというと、生涯学習センターの管理運営に係る陳情の審査が指定管理者指定議案の審議の前提となる、という関係にはなかったと思います。
18件の陳情は、やはり3月臨時会において上述のa.またはb.の形で取り扱わなければ願意に向き合えないものでした。それができなかった時点で迷走は必至でした。