岐阜市役所とメディアコスモスを見てきました

10月25-26日、鎌倉市議会建設常任委員会の行政視察で、豊田市のエコフルタウン、岐阜市の本庁舎と隣接する「ぎふメディアコスモス」を訪ねました。

「とよたエコフルタウン」は、鎌倉市と同じく2018年にSDGs未来都市に選定された豊田市が「ミライのフツー」と位置付けた先進技術を体感できる展示場です。【末尾に写真】
鎌倉市の取組みの参考になったのは、岐阜市役所本庁舎と複合文化施設「メディアコスモス」でした。

ぎふメディアコスモス
視察2日目の午前中に訪ねたメディアコスモス(2015年7月開館)は、岐阜駅から徒歩25分の距離にある、岐阜大学医学部跡地3.1haの北側に整備された複合文化施設です。
中央図書館(知の拠点) 市民活動交流センター・多文化交流プラザ(絆の拠点) ホール・ギャラリー等(文化の拠点)の3つの機能を備え、「屋根の付いた公園」のようなサード・プレイス(自宅や職場とは別の、コミュニティにおける心地のよい第3の居場所)と位置付けられています。

ぎふメディアコスモス

神奈川県内には、類似の複合施設として開館から約3年で累計入館者数が1千万人を突破した大和市の文化創造拠点シリウスがありますが、空間が醸し出す雰囲気からは「せんだいメディアテーク」に近いものを感じました(せんだいメディアテークは、メディアコスモスを設計した建築家の伊東豊雄さんの代表作で、仙台市を訪ねる折には立ち寄らずにはいられない魅力的な場所です)。

メディアコスモスの外観・内観を特徴づけているのは、県産ヒノキ板を活用した木製格子屋根と天井からぶら下がる漏斗状のポリエステル繊維のかさ「グローブ」です。
両方が組み合わさり、広々とした公園のような「大きな家」と気持ちの良いリビングのような「小さな家」を体現し、小さな家に重点的に空調・採光することで使用エネルギーにメリハリを付けているそうです。

木製格子の天井と布製のかさ(グローブ)

市民の活動拠点となる中核的施設の整備では、図書館を中心に、市民活動交流センターや市民活動・文化活動のためのスペースを多様に配置するのが、最早スタンダードとなっています(2000年 せんだいメディアテーク、2011年 武蔵野プレイス、2016年 大和市シリウス 近いところでは2021年 石巻市まきアートテラス)。

鎌倉市は先頃、市庁舎現在地利活用基本構想を策定しました。市民にとって使いやすい、しょっちゅう行きたい施設になるかどうかは、建物のデザインが持つ力に大きく左右されるのではないでしょうか。想定される規模は異なりますが、メディアコスモスも参考事例であると感じました。

図書館のYA(ヤングアダルト)コーナー

市民活動交流センターに隣接する多文化交流プラザ

岐阜市役所
「みんなの広場カオカオ」を挟んで医学部跡地の南側に位置するのが、18階建ての岐阜市役所本庁舎(2021年1月竣工、同5月開庁)です。庁舎2階の食堂で昼食をとった後、行政部の技術参与の方から庁舎整備についてのお話を伺い、庁舎内を見学しました。

みんなの広場から見た庁舎

用地と財源
旧庁舎は現在地よりも岐阜駅に近い場所にありましたが、老朽化、耐震性不足、狭隘・分散配置、バリアフリー不対応などの課題があり、その場での建替えか移転しての整備かで検討が行われた結果、医学部跡地での新設になりました。

整備のタイミングは、元利償還金の70%が国から普通交付税で措置される「合併特例債」を活用できる期限が考慮されたようです。
旧庁舎の解体費用も含めた事業費の総額273億円のうち、何と3分の1に当たる91億円が合併特例債で賄われました。そして約128億円が基金の充当です。基金は1987年度から積み立てていたそうです。

庁舎の特徴
延べ面積が4万平米近い高層の庁舎ですが、「利便性と快適性を追求した開かれた庁舎」と謳っているとおり、どのフロアも機能的ではあっても、それが無機的で固い感じにはなっていない印象です。

市民相談室・消費生活センターなどの相談窓口や子ども支援課・子ども保育課が設置された2階にはキッズルームも!

議会がある4階からはウッドデッキの緑のテラスに出られます。前述の大和シリウスも中層階の緑のテラスが印象的な建物ですが、シリウスと岐阜市庁舎の施工会社は同じです。

環境配慮では、豊かな太陽光と地下水の自然エネルギーの積極的な活用により光熱水費のランニングコストとCO2排出量の削減を実現しているそうです。

防災は?
防災フロアと位置づけた6階には、災害対策本部室が常設されています。
庁舎は、南海トラフ巨大地震や近傍の断層の直下型地震に備えて基礎免震構造を採用しているとのことです。

長良川の河岸と500mほどしか離れていないロケーションにあって、どのような水害対策を講じて「市民に安心を提供する新庁舎」であろうとしているのか、ということに関心を寄せていましたが、次のことがわかりました。
庁舎の敷地はハザードマップで1.0mの浸水想定範囲に該当(長良川は天井川なので堤防が壊れれば氾濫)するため、庁舎1階の床レベルを周囲よりも1m嵩上げ。
万が一、嵩上げした1階の床レベルを乗り越える浸水があった場合に備え、地下免震層に排水側溝と排水装置を設置。
庁舎機能の維持に不可欠な熱源機械室・電気室・発電機室などは、地階ではなく8階に集約。
庁内モニターを活用し、日常的に長良川の水位情報を提供。
長良川の伏流水の水脈があり、数メートル掘ると地下水が浸み出てくる地質(但し、支持層はそんなに深くなく堅い)でもあるため、地下に免震構造は設けているが、地下室は極力設けず、公用車の駐車場もない。

庁舎の展望フロアから長良川を望む。手前左はメディアコスモスの屋上。

技術参与の方の説明で、浸水対策、水害対応について気負った感じなく話されていたのは新鮮でした。岐阜市が長良川とともに栄えてきた街だからかもしれません。文献調査ではわからないことを垣間見た気がしました。

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初日・豊田市
とよたecoful town 電動モビリティ体験試乗/左奥は水素ステーション