津波避難困難地域の解消を!(鎌倉市議会6月定例会報告)

建設常任委員会(6月16日、23日)で生じた委員発言をめぐるスッタモンダが後をひき、6月議会(6月26日閉会)の報告を今頃になって致します。

一般質問で久しぶりに取り上げた津波避難についてです。
津波避難の考え方を確認し、津波避難困難地域の解消に向けた積極姿勢を求めました。

津波避難困難地域
津波避難困難地域とはドキッとする名称ですが、鎌倉市は、2014年度の津波避難計画、2015年度の津波避難計画地域別実施計画の策定を通して、該当地域の把握を行いました。

鎌倉に津波が最速で到達するまでの8分間に「津波避難対象区域外に出られない」または「避難対象区域内の津波避難建築物に避難することができない」地域は、坂ノ下・長谷・由比ガ浜・材木座など市内沿岸地域に広く存在します。

揺れが収まり、身の安全を確保して避難に取り掛かるまでに5分かかるとすると、8分間のうち実際に避難に当てられる時間は3分ということになり、3分間で移動できる距離は180mと試算されています。よって、津波避難困難地域は、津波避難対象区域の境界が180mよりもさらに遠方であり、かつ180m圏内に津波避難建築物が存在しない地域、ということになります。

津波避難誘導標識
鎌倉市の津波避難の原則は、高台や津波浸水想定域外への避難です。
避難誘導標識は、2018年度は長谷、2019年度は材木座、2020年度は腰越、2021年度は七里ガ浜・稲村ガ崎、2022年度は由比ガ浜・坂ノ下の各地区において、地元の意見や要望を聞きながら設置を進めてきました。

実際の避難時に避難方向を示す路面シートが視認しづらくてはいけないので、今後は、路面シートの設置位置の再検討や、電柱に取り付けられている海抜表示板への避難方向の表示の追加などにも取り組むとのことです。

限られた時間内に津波避難対象区域の外へ
今年3月に各戸配布された『鎌倉市防災情報ハンドブック』p18~20の津波ハザードマップには、津波避難対象区域の境界が水色の破線で示されています。
津波を伴う可能性がある大地震が発生した時に最優先されるのは、津波到達までの非常に限られた時間内に津波避難対象区域の外側に出ることですので、この水色の破線はとても重要です。

今年3月に各戸配布された防災情報ハンドブック

津波ハザードマップの抜粋(防災情報ハンドブックp18~p20)

例えば、名越クリーンセンターは津波避難空地に指定されていますが、避難対象区域の内と外の区分ラインよりもかなり外側にあるので、目指す地点としては大きな意味を持ちますが、その敷地内に到達しなければ避難が完了しないというものではありません。

区分ラインの外側に、津波避難空地がある場合もあれば、ない場合もあります。ハザードマップを確認し、具体的に「我が家の場合は、これこれの道路を海抜が高い側に超えることを目指そう」といったふうに決めておくことが大切だと思います。毎年の沿岸部津波避難訓練に参加されている住民にとっては当たり前のことかもしれませんが、配布された防災情報ハンドブック※をご覧になっていない方は是非確認していただきたいです(※鎌倉市のホームページでも見られます)。

高台への避難路の安全通行確保については、材木座の第一中学校の通学路の斜面の安全対策工事がようやく取組まれたものの、坂ノ下の「きしろホーム」の裏手から高台へ上る道の周辺整備など、課題とされる箇所はまだまだあります。

 

「津波避難ビル」の現行の基準
時間内に避難対象区域の外側に出るのが難しい場所に居住・就業等されている方は、区域内で緊急避難する建物の見当をつけておく必要があります。

一般に津波避難ビルという名称が知られていますが、2017年に内閣府が技術的助言として公表した新基準には、津波による漂流物の衝突によって建築物等が容易に倒壊・崩壊するおそれのない構造要件なども含まれており、名称使用が限定されるようになりました。

鎌倉市が津波避難建築物と位置づけている建物(上述の防災情報ハンドブックには、「津波来襲時緊急避難建築物」という名称で30か所を掲載)の新基準への適合性の検証は、経費がかかることもあって未だ行われていません。

津波避難建築物は、2011年度末からの12年間に10箇所増えていますが、箇所数は全体的に足りておらず、広い空白域があることの問題も大きいため、検証を行うことで指定解除の事例が出ることを避けたいという意向があるのかもしれません。

津波避難建築物の点検と住民への情報提供
実は、国も「(適合しない建築物について)やむを得ず指定を解除しない場合は、施設の抱える課題について地域住民等に周知をしておくべきだ」と指摘しています。

専門的な適合性検証を行うまでもなく、建物の位置・堅牢性・屋上へのアクセスなどで課題があり、そこよりもさらに安全な場所に避難することが望ましい施設については、まずは地域に向けて課題の周知をはかるべきでしょう。

今回の質問に先立って、津波難建築物の大方のところを改めて見て回りました。中には、築年数が経っているもの、外観からは堅牢なつくりに見えないもの、屋上へのアクセスの確保が不十分なものが含まれており、津波避難建築物の標識が見つけられなかったところもありました。

これに言及したところ、市民防災部長からは、「標識がわかりにくい場所や劣化している箇所もあることから、現在再設置に向けた取組みを進めており、あわせて施設利用に際して施設管理者と避難施設としての利用について改めて調整を図る必要があると考えいる」という答弁を得ました。

津波避難建築物を見て回り、標識や階段をチエックし、写真撮影(5頁のうちの1枚)

施設整備の補助は?
津波避難については、ハザードマップの作成や避難訓練などのソフト面の対策だけでなく、避難路・避難建築物などのハード面の整備に力を入れることを繰り返し訴えてきました。
津波避難建築物を増やすには、民間による施設整備や建物の建築・改修の折に協力してもらう必要があります。2019年の6月議会で「藤沢市の津波避難施設整備補助金交付事業のような取組みができないか」と質問しましたが、この間補助金交付の検討事例がなかったことが今回わかりました。鎌倉市には、もっと積極的な姿勢を示してほしいです。 

関係課の連携体制で戦略的なハード整備を
市長には、「避難困難地域を解消するハード整備の方針を作るべきではないか」と尋ねました。ハード整備を行う具体的なエリアに狙いを定め(=方針を持つ)、あらゆる機会を捉えて実現をはかるように努めるべきです。

現在、鎌倉市には、材木座保育園跡地に津波避難施設を整備することや、鎌倉消防署移転後に当該地に津波避難機能を確保することが地域要望として寄せられています。そうした地域要望にしっかり向き合うためにも、ハード整備の方針をもつべきなのだと考えます。

民間の協力を得てハード整備を進めることに戻ってもう一点付け足すと、民間に働きかけるには、関係する複数課の連携体制の強化ということが挙げられます。
現行でも、マンション建設等の開発計画が持ち上がった際には、開発事業協議会において庁内関係各課の意見聴取が行われています。津波浸水想定区域内における津波避難建築物としての活用が見込まれる事業計画である場合は、事業者に対し住民避難への協力に向けた協議要望も提出しているとのことです。しかし、そこで成果をあげるには、まちづくり・地域づくりに関わる課の連携体制が必要であって、総合防災課だけで進められるものではないと思います。

市民防災部長からは、「津波避難施設の確保については、沿岸域部における建築物の高さ制限・津波避難に資する建築物に対する近隣住民の理解など解決すべき課題がある。避難困難地域の解消を含む津波避難対策については、組織的・横断的な取組を通じて課題解決を図る必要があると認識している。新たな津波避難建築物の確保に向け、まちづくりの視点を踏まえて関係各課と連携していく」との答弁がありましたが、これまで手をこまねいてきたことを前進させるには、新たな体制が必要だということを痛感しています。