他市との比較でわかる鎌倉市現庁舎の「狭さ」
鎌倉市役所現庁舎が抱える課題としては、老朽化、耐震性不足による防災・復旧拠点としての脆弱性、バリアフリー不対応、分散化による業務効率の低下などとともに、「狭い」ことからくる ▽良好とは言い難い執務環境 ▽防災機能や市民スペースの確保ができていないこと ▽来庁者の相談対応などでのプライバシー確保の難しさ ▽地震発生時の初動が遅れる懸念、などがあげられます。
庁舎の狭さについて、神奈川県政策局自治振興部市町村課がまとめた『令和3年度神奈川県市町村公共施設概要』(令和5年2月公表) 所収のデータをもとに、県内の他の一般市との比較を試みます(区役所がある政令市は比較対象から除外)。
令和3年度神奈川県市町村公共施設概要
職員1人当たりの本庁舎の床面積 ※本記事の末尾に(注)
『公共施設概要』の「16.その他施設(1)市町村立施設」に「本庁舎」があります(PDFファイルではp.29)。
本庁舎の延べ面積と職員数から職員1人当たりの本庁舎の床面積をエクセルファイルの表計算でグラフ化したところ、次のようになりました。
鎌倉市は16市中14位に低迷。
なお、16位の三浦市、15位の厚木市は、移転先での新庁舎整備を進めており、三浦市は2026年4月に供用開始、厚木市は2027年春に工事完成の予定のようです。
市民1人当たりの本庁舎の床面積
人口規模との関係で本庁舎の床面積を比較してみます。
本庁舎の延べ面積を市の人口で割った市民1人当たりの面積を計算すると、鎌倉市は15位とさらに低迷。厚木市が16位です。
「市民1人当たり」の面積は小数点以下の小さい数字になるため、次のグラフは便宜上市民1000人当たりの本庁舎の床面積を表しています。
このシンプルな2通りの比較は、厚木市・三浦市の新庁舎整備完了後は、鎌倉市現庁舎が県内一般市「最狭」になることを示しています。
狭いというのは機能不全であり、脆弱であるということですから、県内他市は庁舎の整備を進めています。
9月議会では、「本庁舎を長寿命化改修をして使い続ければよい」という立場の議員が、職員の執務環境に言及して、市民対応のスペースと区切って執務環境を改善すべきだと主張していましたが、それができない狭さであるところから庁舎整備の議論は始まっています。
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※注 鎌倉市の『本庁舎機能更新に係る基礎調査 報告書』(2016年3月)記載事項との相違について
鎌倉市の『報告書』(p27)には「職員一人当たり庁舎面積 13.2㎡」と記載されています。調査時期が異なること(6年間の開き)もありますが、こちらでは「職員数=座席数」(フルタイム勤務でない非常勤職員等もいるため、実際に必要となっている席数を職員数とする)で計算しています。
一方、県の『公共施設概要』は作成要領で
◇調査時点は、施設の現況については令和4年3月 31 日現在、専任職員数は令和4年4月1日現在とする
◇「本庁舎」には、当該団体の主たる事務所としての庁舎について、議会関係、消防関係、水道、(中略) 病院事業関係として専用する部分を除いて入力する。専任職員数についても上記に準じて入力する。本庁舎の職員数には特別職及び教育長は計上しない。
―としています。