市民活動の表現の自由~市民活動センター条例の改正をめぐって(その1)
3月15日の2月定例会最終本会議では、新年度の予算議案とともに鎌倉市市民活動センター条例の改正議案の採決が行われ、賛成多数(賛成17人、反対7人)で可決しました。神奈川ネットは賛成しました。
鎌倉市市民活動センターとは
●市民活動センターは、鎌倉(市役所第2分庁舎)と大船(たまなわ交流センター1階)の2箇所にあり、福祉・環境・まちづくりなどの社会的課題に取組む市民活動を、会議室や印刷機等の機材の貸し出し、活動の相談などでサポートしています。
●NPO法人「鎌倉市市民活動センター運営会議」が指定管理者としてセンターの管理運営に当たっています。
●会議室(使用料無料)および機材の利用には、市民活動センターへの団体登録が必要とされており、登録申込みを受けた指定管理者は、市民活動について定めた条例(「つながる鎌倉条例」)や社会貢献への取り組みなどの視点から登録の可否を判断します。
改正センター条例は「つながる鎌倉条例」の準用
今回の条例改正は、市民活動の推進に関する基本理念や施策の基本事項を定めたつながる鎌倉条例の施行から既に5年が経ったこともあり、次の指定管理期間(2025年度~)に向けて条例の規定を整理したもので、変更は、大きく3点です。
●第1条の市民活動の定義
●指定管理者による管理に、「施設の維持管理等に関する業務」を追加(現状を踏まえた明文化)
●指定管理者による管理に、「センターの利用の承認等に関する業務」の規定を設けたこと(これまでは「センター利用の調整」としていた)
条例の第1条は「市民活動を支援するために市民活動センターを設置し…」と規定していますが、その「市民活動」を定義した部分は、次のように変更されました。
このように、つながる鎌倉条例の市民活動の定義の引用により、同条例の除外規定(上記ア~ウ)が、「市民活動センターが支援が行う市民活動」にも当てはまることになります。
つながる鎌倉条例の市民活動の定義における除外規定は、条例策定時に市が独自に考え出したものではなく、特定非営利活動促進法(NPO法)のNPO法人の定義を準用したものです。
アは宗教活動、イ・ウは、実質的に「政治団体(※)が行う政治活動」を指していると言ってよいでしょう。
※政治資金規正法は、次の(1)(2)の活動を本来の目的とする団体および主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体を「政治団体」としています。
(1) 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること
(2) 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること
NPO法の定義の準用だということはわかりますが、シロウト的には「但し、(市民活動の定義から)宗教活動および政治団体による政治活動を除く」となっている方がわかりやすかったです。
別の観点として、「市民活動の定義はNPO法人の定義よりも幅広くてよいはずだ」という指摘もなりたちますが、NPO法人が税制上の優遇措置を受けることや市民活動センターの登録市民団体がセンターの施設利用を無料とされていることと市民活動の定義に除外規定が設けられていることとの間でバランスが取れているとも考えられます。
では、これまでの市民活動センター条例の運用ではどうだったのか
冒頭の「鎌倉市市民活動センターとは」で述べたとおり、市民活動センターの会議室や機器類の利用はセンター登録団体に限られており、登録可否の判断は、市民活動について定めた条例(つながる鎌倉条例ができてからは同条例)や社会貢献度などの視点でフィルタリングがされていました。
たとえば統一教会のような宗教団体が公益的活動を掲げた市民活動団体の名称で登録を申請した時に、活動の実態をどこまで把握して可否の判断ができるかは難しいところであるものの、センターの運用においては、宗教団体と政治団体が登録団体にならないようにされてきたわけです。
会議室の利用が無料であるのも、市民活動支援を目的とした施設であるからで、生涯学習センターとは、もともとの位置づけが違っています(生涯学習センターについては、別の記事(その2)に書きます)。
このようなことから、市民活動の定義をつながる鎌倉条例の規定と合致させる今回の市民活動センター条例改正は、市民活動の定義を従来の条例運用の実態から狭めるものではなく、センターの設置目的を変更するものでもないと考え、条例改正議案に賛成しました。
わかりにくい「政治上の主義」の逐条解説は、もとは国会答弁!
もう少し補足します。市民環境常任委員会、予算等審査特別委員会、最終本会議での議案に対する討論で俎上にあがった、除外規定中の政治上の主義という文言についてです。
つながる鎌倉条例には、逐条解説が作られており、全文が市のHPで見られます。
第2条第2号の逐条解説は、「政治上の主義とは、○○主義といわれるような、 政治によって実現しようとする基本的、恒常的、一般的な原理や原則を指します。なお、政治によって具体的な政策を実現しようとするものは、政治上の主義の推進には当たりません」というものです。
これも、内閣府のホームページに掲載されているNPO法Q&Aの解説をほぼそのまま持ってきたもののようですが、当該解説は、議員立法であるNPO法が衆議院内閣委員会で審議された際の議案提出者の辻元清美議員(当時は社民)の説明がもとになっています。
審議録を確認したところ、この時辻元議員は、法制局と相談の上で練ったとして「『政治上の主義』とは、政治によって実現しようとする基本的・恒常的・一般的な原理・原則をいい、自由主義、民主主義、資本主義、社会主義、共産主義、議会主義というようなものがこれに当たる。」と答弁しています。
今日において世界共通の普遍的価値観、SDGsと同様に世界共通で目指すべき目標ともいえる民主主義、平和主義、ジェンダー平等主義などを「○○主義」と言いならわされることをもって「政治上の主義」で一緒くたにしてしまうことには違和感を覚えます。「では、民主主義が踏みにじられているような状況を問うような活動や、議会制民主主義と直接民主主義について学ぶような活動は市民運動とは言えないの?!」という驚きの声が聞こえてきそうですが、ポイントは○○主義の例の方ではなく、「基本的、恒常的、一般的な原理や原則」が「政治によって実現しようとする」という文言で限定されていることにあると受けとめるべきでしょう。
ここに注目すると、つながる鎌倉条例 第2条第2号イ「政治上の主義を推進し…目的とする活動」は、「政治団体が自らの党勢を拡大するための政治活動」と解釈するのが、やはり自然ではないでしょうか。そのように限定的に解釈すべきものだと私は思います。
そしてもう一つ重要なポイントは、逐条解説が「政治によって具体的な政策を実現しようとするものは、政治上の主義の推進には当たりません」と明記していることです(シツコク国会答弁を紹介すると、辻元議員は「この政治上の主義と政治上の施策とは区別されております」と述べています)。
予算等審査特別委員会では、井上三華子議員が「政権の施策、憲法改定、軍備増強、安保法制などを批判し、やめさせようとする活動は、『政治上の主義の推進や支持』には当たらないということで宜しいですね。」 としっかり確認しました。