鎌倉市無電柱化条例について
鎌倉市無電柱化条例の制定議案が12月議会(12月23日閉会)で可決しました。
電線類を地下に埋設することで、都市の防災機能の向上、安全で円滑な交通の確保と景観の保全に役立てる「無電柱化」を進めるにあたって必要な事項を定める条例です。
第3条で「無電柱化路線等における義務」を規定
既に市が無電柱化を行った小町通りと芸術館通りの2路線と深沢地域整備事業用地(県道304号線を除く)を「別図」に掲げ、
①その路線および区域において電線類を敷設する場合は、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設して敷設するための管路などの設備を整備しなければならない
➁電線類の敷設を要請する者は、電線類を敷設する者に対し、費用を負担しなければならない
ーと規定しています。
第4条で「無電柱化が特に必要であると認められる道路の占用の禁止等」を規定
市長は、無電柱化が特に必要であると認められる道路(市が管理するものに限る)について、当該道路の占用の禁止または制限、その他無電柱化の推進のために必要な措置を講ずるものとする
―と規定しています。
無電柱化の義務付け対象について
第3条の「無電柱化路線における義務」の対象は、小町通りと芸術館通りの2路線と深沢地域整備事業区域とされています。「たったそれだけ?」と驚きましたが、今後「鎌倉市無電柱化推進計画」で無電柱化対象路線として挙げられている13路線(うち、上記2路線は施工済み)から新たに無電柱化施工が進んだ路線が出てくれば、「別図」に追加し、そのつど条例改正をするとのことです。
また、2016年施行の無電柱化法は、第12条で、「関係事業者(道路上の電柱・電線の設置・管理を行う事業者)は、道路事業や市街地開発事業等が実施される場合には(略)電柱または電線を道路上に新たに設置しないようにする」旨を規定しています。
土地区画整理事業は「市街地開発事業」であるので、鎌倉市条例で深沢地域整備事業用地を義務付け対象にしたのは、国の無電柱化法を踏まえたものだということになります。
事業化には時間がかかる
条例制定議案に反対した議員からは、条例化以降の取組みの道筋が見えず、推進体制を整備する規定もなく、市としてのやる気が感じられないという指摘がありました。一理ある指摘ですが、要は電線地中化には、費用と期間がかかるということなのだと思います。
鎌倉市無電柱化推進計画には、
◆無電柱化の手法が様々ある中で主な整備方式となっている電線共同溝の整備では、1 ㎞あたり約5.3億円の費用がかかる。
◆既に水道やガスが埋設されている地下空間に新たに管路を敷設するため、電線事業者・占用企業者・沿道の住民等との調整や支障となる埋設物の移設などの段階を踏む必要があり、一般的に(1件の対象路線につき)完成まで7年から10年程度の長い期間を要する。
◆歩道幅員が狭い道路や歩道のない道路では、道路内に地上機器(トラ ンス等)を設置する場所の確保が困難なため、道路に隣接する公共用地や民地に確保する必要がある。
◆計画期間は、2034年度末までの約10年間とし、まずは対象路線における無電柱化手法の検討を行い、計画期間内に、対象路線の内、合意が得られた路線の事業化(次期総合計画等への搭載及び予算化)を目指す。
—と書かれています。
無電柱化推進計画は、国から努力義務として策定を課されたこともあって策定しますが、実際の取組みはスローペースでしかできません。
計画の進捗がスローペースだからこそ、この時点で条例をつくっておく意味があるとも考えられます。
裏手の一帯なども含め、電柱の新設を防ぐ必要がある無電柱化施工済み路線と、効率的な電線地中化の施工が可能で、無電柱化法による法的な要請もある土地区画整理事業用地については、条例に位置づけて無電柱化を確実なものとしておくということではないでしょうか。
無電柱化推進計画の中で無電柱化対象路線として選定した路線ごとに①防災 ②安全・円滑な通行確保 ③景観形成 ④道路事業等に合わせた無電柱化 ⑤ その他(地域の魅力アップなど)の5つの観点のうちのいずれに該当するかを整理しているのは評価できるので、そのことも加味して条例案には賛成しました。