「少人数学級の本格的な導入を求めることに関する意見書」 ~スクリーン・ニューディールが進む今だからこそ!

少人数学級の導入を求める意見書案が可決
9月25日の9月議会最終本会議で、議員提出議案「少人数学級の本格的な導入を求めることに関する意見書の提出」が総員賛成で可決しました。

鎌倉市の小中学校では、休校明けの6月、クラスを2グループに分け、午前・午後に分けて登校する分散登校が実施されました。密を避けるためのものでしたが、少人数で再開したことにより子ども達が久々の学校生活に慣れやすい環境になり、少人数学級のよさが改めて確認されました。鎌倉市では、小学校1、2年生を35人学級にしていますが、拡大が必要です。今回の意見書は、そのための教員確保に向けて国と県に積極的な取組を求めたものです。

国も既に動き始めていることがわかりました。文科省が2021年度予算の概算要求に、金額を示さない「事項要求」として少人数学級の実現に向けた体制整備を盛り込んだのです(9月30日夕刊の報道)。「来年度から公立小中学校の全学年を30人学級にした場合、教員を8万~9万人増やす必要があるが、10年かけて段階的に移行すれば、少子化で生じる余剰人員などで(教員の大幅な増員に多額の予算を当てなくても)ほぼ対応できる」という試算が示されました。

 

スクリーン・ニューディール
監視社会の到来に警鐘を鳴らしているカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインさんは、巨大IT企業がコロナ危機に乗じて非接触型テクノロジーの潮流をつくろうとしている状況を「スクリーン・ニューディール」と呼びます(「クーリエ・ジャポン」2020.8.13より)。スクリーンとはパソコン画面であり、ICT化・デジタル化を指し、ニューディールは、1930年代に世界恐慌を克服するために米国政府がとった経済政策に由来します。

教育については、「子どもたちの学習すべてにテクノロジーを介在させるのか、人に投資していくのか」と迫り、「スクリーン・ニューディールではなく、クラスの生徒数を半分にして教員数を2倍にしたり、屋外で教える方法を考えないのか」と問いかけています。

 

行政のデジタル化
AIやIoT、ブロックチェーンなどの革新的なデジタル技術をデータを核に駆動させることで社会のあり方を大きく変えるというDX(デジタルトランスフォーメーション)。昨今、この言葉を聞かない日はありません。

就任早々デジタル庁の新設を打ち上げた菅義偉首相が進めようとしているのは、まず国と地方における行政のデジタル化です。コロナ対応の特別定額給付金の給付に手間取ったことを行政手続きのオンライン化の遅れに結び付けて推進の必要性を説いています。

総務省の2021年度予算の概算要求では、自治体DXの推進に38億8千万円、国の行政デジタル化の徹底に百億7千万円が計上されました。さらに、行政手続きのオンライン化に向けてマイナンバーカードの普及をはかるとして計上した経費は1451億円です。

デジタル化の推進には、言うまでもなく、アベノミクスの成長戦略「ソサエティ5.0」(DXによる超スマート社会の実現)の継承という側面もあります。

 

DXの大きな潮流とグリーン・リカバリー
DXをコロナ禍後の経済復興の柱とするのは世界的な潮流とも言えます。欧州委員会が5月に公表したコロナ危機からの復興基金案にも、デジタル化の推進が掲げられました。
しかし、基金案にはもう一つの柱として、持続可能な経済復興「グリーン・リカバリー」が位置づけられています。
コロナ危機下の経済の再建のためには大きな借金をしてでも財政出動をするというのが、世界各国に共通した戦略ですが、それだけの負担をするならば、温暖化防止・脱炭素社会化に役立つ投資に振り向けようというのが、グリーン・リカバリーの考え方です。9月半ばに公表された復興基金の中核政策では、計画案の支出の37%を気候変動対策に、20%超をデジタル化に充てるよう提案されています(JETROビジネ短信2020.9.18)。

前述のクラインさんも、「コロナ危機後の世界はグリーン・ニューディールにこそ力を注ぐべきだ」と訴えています。グリーン・ニューディールはグリーン・リカバリーとほぼ同義です。
但し、スクリーン・ニューディールが、人と人の接触を否定し監視の強化を招くことを懸念し、危機便乗主義的なデジタル化推進を警戒している点においては欧州委員会と立場を異にします。

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各国がDXを進める中、周回遅れの日本がDX一辺倒の成長戦略を続ければ、遅れの挽回だけに労力を費やすことになるでしょう。
別の選択肢として、気候変動・温暖化対策から経済・社会を捉え直し、この分野に積極的な投資を行うべきです。
人への投資を後回しにしないことも必要です。少人数学級への段階的な移行も、教員が十分に確保できない分をオンライン学習で補うような方策にすり替わっては本末転倒です。