深沢の土地区画整理事業(鎌倉市議会6月定例会報告)

6月16日の市議会建設常任委員会では、深沢地域整備事業の取組み状況についての報告があり、関連する陳情の審査もあって、多くの質疑が行われました。

まず、深沢地域整備事業がどの段階にあるのかということです。【表1 参照】
2021年3月締結の「村岡・深沢土地区画整理事業の施行に関する基本協定」により、同事業を「所要の手続きを経て、土地区画整理法第3条の2第1項の規定に基づく土地区画整理事業として施行する(「協定」第3条)」施行者である独立行政法人都市再生機構(UR都市機構、URと略)が、国土交通省に事業認可を申請し、手続きに入っています。

一方、鎌倉市は、今年度は周辺道路整備に関する4事業を業務委託により実施します。6月現在、そのうちの1件の 「深沢地区事業区域周辺道路整備計画検討業務」の委託事業者を公募・選定中です。

【 表1 】

土地区画整理事業の平均減歩率
建設常任委員会では、村岡・深沢土地区画整理事業の平均減歩率が示されました。42.7%です。

公共減歩と保留地減歩
土地区画整理事業では、地権者からその権利に応じて少しずつ土地を提供してもらい(減歩)、この土地を道路・公園などの公共用地が増える分に充てる(=公共減歩)ほか、その一部を売却し事業資金の一部に充てる(=保留地減歩)ことが行われます。【図1参照】

【図1 UR都市機構 HPより】

事業資金は、保留地処分金の他、公共側から支出される都市計画道路や公共施設等の整備費に相当する資金から構成されます。
これらの資金を財源に、公共施設の工事・宅地の整地・家屋の移転補償等が行われます。

公共施設: 道路・広場・公園・緑地・河川・水路等、公共の用に供する施設
宅地: 「公共施設の用に供される国または自治体の所有する土地(=公共施設用地)」以外の全ての土地。

平均減歩率とは
今回示された平均減歩率(42.7%)は、土地区画整理事業の総面積に対する「公共施設用地と保留地の面積の合計」の割合です。
別の言い方をすると、「施行地区内の宅地全体の面積が土地区画整理事業の施行前と後でどのような割合で変わるかを示したもの」です。
個々の宅地の減歩率の平均値あるいは中央値を意味するものではありません。

個々の宅地の減歩率が決まっていくのはこれからです。土地区画整理の前と後で宅地の立地・形状・利用状況等を踏まえた土地評価で計算され、個々に異なるものになります。
今後、仮換地に向けて施行者と個々の地権者との間で折衝が行われて、土地区画整理審議会が決定します。
例えば、換地後に接道が従前よりもきわだってよくなる場合には平均減歩率に近い減歩率になる可能性がもないとは言えませんが、
平均減歩率が40%台の土地区画整理事業で、個人地権者の住居用宅地の減歩率はそれよりも10~10数%小さくなる(面積が4割も減ってしまうようなことにはならない)のが一般的だと思われます。


UR施行の土地区画整理事業とは ?!
建設常任委員会では、「土地区画整理事業がURありきで進んだこと」について理事者(松尾市長)の出席を求めた質疑がありました。
また、別の委員から「URが土地区画整理事業を施行するとはそもそもどういうことなのか?」という問題意識の質問も出ました。

独立行政法人であるUR都市機構は、都市再生等、国の施策に基づいて市街地の整備改善を促進すべき地域内において、機構自らが施行者となり、機構の資金・人員・ノウハウを活用して事業を実施します。

土地区画整理法は、3条の2第1項でUR施行を次のように規定しています。
(独立行政法人都市再生機構の施行する土地区画整理事業)
第3条の2 独立行政法人都市再生機構は、国土交通大臣が一体的かつ総合的な住宅市街地その他の市街地の整備改善を促進すべき相当規模の地区の計画的な整備改善を図るため必要な土地区画整理事業を施行する必要があると認める場合においては、施行区域の土地について、当該土地区画整理事業を施行することができる

鎌倉市は、UR施行で深沢の土地区画整理事業を行えるよう、村岡地区との一体施行という枠組みをつくったという見方ができます。
それは、「URを儲けさせるために事業をやらせてあげる」ということではなく、「失敗が許されない事業だからURに手堅く施行してもらう」ということだと理解しています。

2021年12月議会で、UR施行について詳しく質問していますので、ご覧ください。

独立行政法人の法的な位置づけ(独立合成法人通則法より)
第二条 この法律において「独立行政法人」とは、
国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、
民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの
または一の主体に独占して行わせることが必要であるものを
効果的かつ効率的に行わせるため、(中略)設立される法人をいう