陳情は市民参加の大切なツール

鎌倉市議会には毎定例会市民から多数の陳情が出され、付託先の委員会で審査されています。市民が議会に提案や要望を直接届ける方法としては請願と陳情があり、紹介議員が必要な請願が、憲法で保障された権利であるのに対し、紹介議員が不要な陳情には法的な保障はありません。請願と陳情の取扱いに差をつけて陳情は審査に付さない軽い扱いに留めている議会も多く見られますが、鎌倉市議会では請願と陳情の取扱いがほぼ同等であるため、もっぱら陳情の形式が選ばれています。陳情書を提出した人は、付託先の委員会で審査が行なわれる際、委員会の許可を得て自らの陳情書を補完する発言をすることができます。発言時間は10分以内と定められていますが、発言後に委員から質問があればそれに答える時間も配分されます。

神奈川県内の他の議会と比べ、また全国的に見ても、鎌倉市議会が陳情提出者の発言を直接聞くことにかけている時間は長いと言えます。私はこれまで複数回にわたり神奈川県議会での請願・陳情提出者の意見陳述を体験(自ら陳述または傍聴)してきましたが、県議会では3分を超える発言はできず、超過すると議会局職員から制止の声がかかります。委員との質疑もありません。一方、私が昨年9月の鎌倉市議会定例会に陳情を行なった時には、総務委員会での発言と質疑で20分が取られました。その後、委員と所管課との質疑、委員の意見表明、採決と進み、この陳情1件の審査に要した時間は約1時間でした。鎌倉市議会における陳情の取扱いは、陳情提出者にある程度まとまった時間を配分して発言の機会を保障する点において評価に値する、と私は考えます。現行では陳情提出者の発言と質疑が「休憩時間内」と位置付けられ委員会の議事録に残らない点が問題ですが、これが改善されれば、鎌倉市議会の陳情取扱い手続きは、他議会の範となりえます。

ところが昨年12月議会は、市民からの陳情をめぐり、残念な経過をたどりました。議員定数についての「現状維持」と「2人減」を求める2件の陳情を双方不採択としながら、その直後に議員提案で2人減議案を提出、臨時会を開いて可決させたのです。議員提案には陳情とは異なった視点の提案理由が付けられていましたが、その是非はともかく、議会として陳情を軽視した取扱いであったとの懸念が残ります。