かまくらまちづくり市民対話セッション

10月29日、かまくらまちづくり市民対話セッション(鎌倉市主催。経営企画部経営企画課 公共施設再編担当が所管)に参加しました。
報告記事は書かずにおこうと思ったのですが、10月31日―11月1日と総務常任委員会で他市の公共施設整備の事例を視察して彼我の違いが強く印象付けられたので報告することにしました。

市民対話セッションとは…
台風接近の不安定な天候でしたが、30数名(主催者側除く)が会場の福祉センターに集い、7つのテーブルに分かれて第1部の講演に耳を傾け、第2部でテーブルごとに「対話」(おしゃべり)をしました。
参加者の多くが、日頃鎌倉市政に関心をもって活動をされている方のように見受けられました。
広報かまくら10月15日号の3面には「市民対話参加者募集」が掲載されてはいましたが、市民対話の開催(何に関するものなのかも含め)の周知は不十分で、よほど継続して市政をウォッチしている方以外はアンテナに引っかからなかったと思います。

公的不動産利活用「中間取りまとめ」
鎌倉市は、平成28年度末に「本庁舎は移転して整備する」という方針を決定し、今年度は学識経験者などで構成する鎌倉市公的不動産利活用推進委員会を設置して、市が所有する主たる5件の公的不動産の利活用とともに、本庁舎の移転候補地の検討を行うこととしました。
推進委員会は5月以降4回開催され、8月21日の第4回で確認した内容をもとに次のような「中間取りまとめ」(中間時点における利活用の基本方針)が公表されています。

  • 鎌倉市役所(現在地)…市民サービスの提供・公共施設再編と民間機能の導入によるにぎわいや憩いの創出
  • 深沢地域整備事業用地…本庁舎の移転先とし、消防本部や総合体育館と一体となったシビックエリアの形成
  • 梶原四丁目用地(野村総合研究所跡地)…自然環境を生かした利活用と企業誘致
  • 扇湖山荘…自然環境を生かした利活用と旧邸宅群の一つのシンボルとしての先導的な活用(企業誘致など)
  • 資生堂鎌倉工場跡地…利便性を生かした企業誘致
    (イメージ図↓) https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keiki/documents/h29pre_tyuukan.pdf

この中間取りまとめを受け、公的不動産の利活用推進について考えよう、という市民対話だったわけです。

最終とりまとめに向けた流れ
市民対話は10月から来年1月にかけて4回程度行い、そこで出された市民意見を推進委員会での検討に反映させて最終取りまとめを行う、年末年始にかけてパブリックコメントも行う、という流れです。第2回の市民対話は11月18日に予定されています。
9月~10月には民間企業の整備事業への参入の意向を確認するサウンディング調査も行われました。

9月議会の一般質問でも、「公的不動産の利活用の検討」という言い方では、何をやっているのかわかりにくい、と苦言を呈しました。
要は、この検討の中で「市役所本庁舎を現在地から深沢に移転させ、併せて現在地を用いて鎌倉地域の公共施設の再編を行う」ことを決める、ということです。

ブレインストーミングだった対話
さて、そうした流れの中での第1回の市民対話セッションに参加したわけですが、感想は、「開催の意図が参加者にはわからなかった」というものです。
第1部の講演は、
〇東浦亮典さん (東急電鉄株式会社 執行役員都市創造本部戦略事業部長)による
「都市ブランディングとまちづくり:東急沿線都市の事例を踏まえて」
〇増井玲子さん (東洋大学 PPP 研究センター リサーチパートナー・鎌倉市公的不動産利活用推進委員会副委員長)による「鎌倉のまちづくり」
でした。
東浦さんのお話は、東急たまプラ―ザ駅最寄りの青葉区美しが丘の「次世代郊外まちづくり」にデベロッパーである東急電鉄と横浜市が連携して取組んでいるというお話で、それ自体は興味深いものでした。
増井先生のお話は、これまでの取組み経緯を押さえたものであったと思います。

しかし、第2部のテーブルごとの「対話」は、「何でも思ったことをしゃべってください、鎌倉ならこんなこともできる、といったことも出してもらえるとよいですね」という投げかけで、いきなりブレインストーミングの段階へと後退してしまいました。
しかも、与えられた時間が15分ほどで、テーブル内で何について話そうか考えているうちに時間が終了。
隣のテーブルから「何のための集まりなのかわからなかった」という発言が出ていたので、その状況は私がいたテーブルだけでなかったはずです。

さらに首をかしげてしまったのは、閉会時に回収した参加者アンケートの質問項目に、「鎌倉市のまちづくりの基本的な考え方(鎌倉・大船・深沢3つの拠点と、これらを結ぶゾーンを骨格とし、官民での公的不動産の利活用を推進していく)について、どう思われますか?」とあったことです。
講演の内容も、市民対話のテーマも、この質問にリンクさせるべきであったと思います。
リンクされていたとは思えませんが、参加者は親切にも意図をくみ取ってこの質問に答えたのでしょうか。
それともピントが合わないままアンケートに答え、厳しい意見が残らない方がよいと考えたのか…。

鎌倉市が参考にしているアオーレ長岡。表面的な参考の仕方ではなく!
長岡市のアオーレ長岡の視察については別の記事に書きました。

3月に策定した鎌倉市本庁舎整備方針には、
「例えば長岡市では、駅前に中心市街地活性化事業として整備した市民協働型シティホールとなる市役所(アオーレ長岡)の機能と、別の施設や市民センターに配置した行政機能を、整理して配置しています。本市の本庁舎整備の検討にあたって、鎌倉地域での必要な市民サービス機能などの行政機能を確保する必要があることも踏まえ、現在地にあるべき機能や公共施設再編等を実現するための機能、別敷地に移転する機能を想定した上で、整備パターンの検討を進めます」
とあり(p26)、「現在地にあるべき機能や公共施設再編等を実現するための機能」を検討するにあたり、アオーレ長岡の事例を参考にしていることがわかります。

そして、既に述べたとおり、今秋公表の「中間取りまとめ」には、市役所本庁舎を深沢地域に移転し、御成町の現在地に市民サービス・相談窓口、図書館、学習センター、ホールなどからなる複合公共施設を民間施設との合体で配置させる「イメージ」が盛り込まれています。

このイメージを念頭に入れた場合、注目すべきはアオーレ長岡の1階に設けられている総合窓口です。
視察の記事にも書いたように、総合窓口は、市役所機能分散によるサービス低下を防ぎ、ワンストップ・サービスの提供をめざすものでした。
何と現在の体制にするまでに組織改革を5年間かけて検討したそうです。

鎌倉市は、本庁舎を移転しても市民サービス・相談窓口は残します、と言っていますが、人員とスペースの確保、具体的な窓口機能については白紙です。
一方で、公共施設再編計画の中で将来的な支所廃止の方向性も打ちだしています。
アオーレ長岡を視察して、市民から求められている市民サービス・相談窓口機能とは何か、ということを根本的に考えなくてはいけない、と改めて思いました。

こういったことについても市民から直截な意見を出していただくのが市民対話ではないでしょうか。