プラスチックごみのリサイクルは、今

自治体が分別収集した容器包装プラスチックは、中間処理施設で異物除去、圧縮梱包されて再商品化(再生処理)事業者に引き渡されます。
鎌倉市の場合、パレットや再生樹脂に再生させる「材料リサイクル」を行うエム・エム・プラスチック㈱に230万3千kg、合成ガスを製造する「ケミカルリサイクル」を行う昭和電工㈱に25万6千kg引き渡しています(引取量は2019年度予定量)。

廃プラ処理にまつわる「?」
鎌倉市の場合は、富津市や川崎市といった近県や県内の事業者に処理を委ねているわけですが、先日視察したJFEプラリソース㈱は、札幌市の容器包装プラを処理していました。なぜ遠距離の処理事業者まで運搬するケースがあるのか?
また、日本の廃プラの有効利用の割合は80%を超える高い数字になっているが、有効利用とは具体にはどういうことなのか?
さらには、なぜ最近まで中国や東南アジアへの廃プラの「輸出」が行われていたのか?
―― 神奈川ネットのメンバーで県内他市の状況も含めて調べる中で、資料の調査だけではわからないことが出てきました。そこで、2月6日、東京都中央区の(一社)プラスチック循環利用協会と港区の(公財)日本容器包装リサイクル協会を訪問し、聞取りを行いました。

 

【プラスチック循環利用協会でうかがったお話
やはり多いサーマルリサイクル
全国の2018年の廃プラの総排出量の中で容器包装が占める割合は大きく、一般系と事業系の合計(891万t)に対して47.4%、一般系(429万t)のみでは78.2%を占めています。

処理方法は、材料リサイクル23%、ケミカルリサイクル4%、サーマルリサイクル(熱回収)56%です。これらを合計した84%(端数切上げ)が「有効利用」と見なされています。
現在、容器包装リサイクル制度ではサーマルリサイクルは処理方法として採用されていませんが、産業系廃プラはその限りではないため、やはり全体的に見れば、サーマルリサイクルが過半数を占めています。固形燃料(RPF)化、セメントの原・燃料化、発電焼却、熱利用焼却などが、サーマルリサイクルに当たります。

一方残り16%の「未利用廃プラ」に区分されるのは、熱回収されない単純焼却(8%)と埋立(8%)です。

ごみ発電を行う焼却炉が増えてプラスチックも燃やす?!
全国のごみ焼却施設(1,103か所)の3分の2が余熱を利用しており、2017年度時点で発電設備のあるごみ焼却施設は34%にのぼります(※)。
さらに国は高効率発電を行う施設の整備を促しています。
そのため、新しくできた焼却炉の多くが発電設備を備え、廃プラも一緒に燃やして熱回収を行っているところも相当数あることから、未利用に分類される単純焼却は減る傾向であるそうです。産業系をセメントの原・燃料に使うことが増えたのも、未利用廃プラの減少につながっているとのことです。
(※鎌倉市の名越クリーンセンターは、大規模改修の折に発電設備を付けませんでした。市では容器包装プラのほか製品ブラも回収し、製品プラは材料リサイクルされています。)

プラスチック生産は石油消費量の約3%
日本のプラスチックのほとんどは、原油を精製したナフサ(粗製ガソリン)から作られています。プラスチックの材料となった原油量と輸入ナフサを原油に換算した量の合算値は、日本における原油消費量の約3%だそうです。日常生活においてプラスチック製品の大量消費を見直す必要は確かにありますが、それをもって石油資源の浪費を是正する目玉施策と考えるのは、全体を見ない捉え方ということになりそうです。
なお、生産されるプラスチックの用途では、約40%が袋やラップフィルムなどの包装材と建築土木用のシートです。

廃プラが「輸出」されていたわけ
容器包装リサイクルの流れにのって資源化される廃プラは国内処理です。また、プラスチックの製造、加工や製品の流通段階で排出される産業系廃プラも、樹脂の種類が明確で汚れや異物が少なく量が見込めることから、料リサイクルの原料として重宝されています。
輸出に回されたのは、国内で手間をかけて処理するより、海外に輸出して処理してもらった方が安くつく廃プラで、かつては特にPETなどは買い取ってもらえるので輸出が行われていた、という説明でした。

 

【(公財)日本容器包装リサイクル協会でうかがったお話】
協会の役割
家庭から出されるガラス瓶、PETボトル、紙製容器包装、プラスチック製容器包装のリサイクル事業を回すために作られた同協会は、リサイクルの義務を負う特定事業者から再商品化実施委託料を受け取り、そのお金で再商品化事業者に処理(再商品化)を委託しています。
どの自治体の収集物をどの再商品化事業者が処理するかは、協会が取り仕切る毎年の入札によって決まります。

材料リサイクル優先の状況は続く?
プラスチックの材料リサイクルの過程では、処理事業者の元に来た廃プラの約半分が残渣として製品になりません。単純焼却・埋立は禁じられており、ケミカルリサイクル(RPFやセメント原料)に回されます。
残渣が生じず、処理単価が安いケミカルリサイクルに回す比率をはじめから高く設定すればよい、という考え方もありますが、収集された廃プラの50%は、まず材料リサイクルの再商品化事業者に落札させるという材料リサイクル優先の運用がされています。
材料リサイクルを行っている中小の事業者を保護する意味合いもあるようです。また、容器包装プラのケミカルリサイクルを行う事業者(施設)は、現在国内で8か所しかありません。

運搬距離を勘案して再商品化事業者を決めることはできないの
入札価格=「再生処理費用+運搬費用-製品の販売価格(PETのように売れる場合)」であるため、排出市町村から距離的に近い事業者が落札する確率が高いですが、北海道のように再商品化事業者の数が限られている地域の場合は、遠方の事業者が落札するケースも出てくるのだそうです。国の審議会(後述)で、運搬距離を勘案して地域ごとのブロック別入札を行うように提案されたこともありましたが、採用されずに今日に至っています。

容器包装リサイクル制度で廃プラを資源化している市町村は約3分の2
全国1,718市町村のうち、3分の1町の617市町村は協会に廃プラの資源化を申込んでいません。
その多くは廃プラを燃やすごみとして処理していると推定されますが、中には市町村独自で回収・資源化を行っているケースもあります。鎌倉市はPETボトルについては協会に申込まず、独自ルートでボトルに再生させています。

リチウムイオン電池の危険性

焼け焦げた電子タバコ(左)とハンディクリーナーのバッテリー(右)

協会での質疑で盛り上がった話題が、リチウムイオン電池の発火の危険性です。モバイルバッテリー、スマートフォン、電子タバコなど、充電式の家電製品の多くにリチウムイオン電池が使われていますが、過度な力が加わると容易に発熱、発火し、廃棄物処理施設等でのリチウムイオン電池による火災が急増しています。これらの充電式家電製品は、外側がプラスチックで覆われていても容器包装プラとして収集してもらうことはできません。
鎌倉市では、使用済みのボタン電池は販売店などに設置されている回収ボックスに入れるよう促しています。

容リ法の見直し
容器包装リサイクル協会でのお話で一番印象的だったのは、環境省・経産省において容リ法の点検(見直し)のための審議会が概ね5年に一度開かれており、材料リサイクルの優先を止めるべき、といった意見も交わされている、ということでした。
1997年に容リ法が本格施行して23年が経とうとしていますが、プラスチックについては、経費負担の問題や国内処理の事業者確保の問題、さらには消費者ニーズに細かく対応するがゆえに容器包装の構造が複雑になり再商品化の手間が増えている問題、マイクロプラスチック汚染問題など、向き合うべき問題が多々あります。リサイクルの仕組みが適正に機能しているかどうかに関心を持つことは大事ですが、消費者として各自の消費行動が問われることでもあると感じました。

協会のサムネイル

日本容器包装リサイクル協会にて