新年度予算に反対しました ~2月定例会振返り(1)
3月25日、鎌倉市議会2月定例会は、43日間に延びた会期を終えて閉会しました。
新年度の一般会計予算案は賛成多数で可決しました。
前々日の予算等審査特別委員会最終日の市長に対する質疑では、生ごみ資源化施設の今泉クリーンセンター敷地内設置計画を含む「2市1町のごみ処理広域化実施計画」に対する質問が集中しました。
神奈川ネットは、市長のごみ処理施策が責任放棄であることなどを問題にして新年度予算案に反対しました。
採決の前に行った反対討論は次のとおりです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神奈川ネットワーク運動・鎌倉を代表して、議案第98号令和2年度鎌倉市一般会計予算に反対、そのほかの予算関係諸議案に賛成の立場から討論に参加します。
はじめに
2月定例会は、新型コロナウィルスの感染拡大への対応により会期を延長して、本日最終日を迎えました。3月23日現在の国内の感染者数は1209人で、亡くなられた方は主に高齢者で41人とのことです。欧米のような急激なカーブを描く感染拡大には至っていませんが、感染症が経済・社会に及ぼした影響は非常に大きく、経済活動や雇用状況に与えたダメージがどの程度長引くか予測できない厳しさがあります。当初予算はこの状況を踏まえたものではなく、今後補正予算等で対応していくことになると思います。当初予算であがっている事業でも、状況によっては見合わせるものが出てくるかもしれません。市長には的確な見極めが求められますし、議会も緊張感をもって臨まなければならないと考えます。
生ごみ資源化施設整備への合意は得られない
それでは、一般会計予算案に反対する立場から、その理由に相当する事柄を順次述べます。
反対理由として、まず、ごみ処理行政の先行きがますますわからなくなっていることをあげます。これに関しては、特別委員会で理事者質疑を行い、意見を付していますが、この場でも申上げざるを得ません。
今泉クリーンセンター周辺の住民から、1300人を超える賛同者の署名を添えて「今泉クリーンセンターを候補地とする生ごみ資源化施設の整備を強行しないことを求めることについての陳情」が提出され、3月12日の本会議で全会一致で採択されました。
新焼却施設建設断念後、議会からも生環審からも、焼却施設をつくらなくても他の廃棄物処理施設はつくるのだから、焼却施設同様に建設反対の声が上がることを考えなくてはならない、という指摘がありましたが、まさにそのとおりになりました。
今泉クリーンセンターの地元3町内会と鎌倉市の間で2016年5月に結ばれた「今泉クリーンセンターの管理運営に関する協定書」には、「鎌倉市が中継施設以外の使途を定めようとするときは、3町内会に対し、その目的、施設概要、環境負荷、使用期限等について、誠実に説明し同意を得るものとする」と書かれています。
にもかかわらず、2018年2月定例会に示した2019年度の当初予算案や、今般の広域化実施計画素案に今泉台への生ごみ処理施設の導入が書かれたのは、地元住民との間の信頼関係を損なうものと言わざるを得ません。
今泉クリーンセンターの地元からは、市が整備しようとしている生ごみ資源化施設の性能や環境負荷などについての疑義とともに、これまで長年にわたり負担を強いられてきた経緯や道路事情からして当該地は適地ではないという意見が表明されています。市長はこの声を誠実に受け止めるべきであると思います。
ごみ処理広域化実施計画の見直しは必至
鎌倉市、逗子市、葉山町の2市1町は昨年11月末に「ごみ処理広域化実施計画(素案)」を発表しました。素案に対するパブリックコメントは既に終わっており、なるべく早い時期に計画として確定させたいとのことですが、本当にそれでよいのでしょうか。立ち止まって根本から見直しをする必要があると考えます。
第1に、ごみ処理広域化実施計画の目指すところはゼロウェイストの追求だとされていますが、現実的に見た場合の肝心かなめの連携は、葉山町のごみを逗子市のCCで燃やすことであり、名越クリーンセンター焼却停止後の第2期において鎌倉市の燃やすごみを、生ごみを取り出して資源化することによってほぼ半減した上で逗子市CCで燃やしてもらうことです。その枠組みに持っていけないのであれば、2市1町の広域連携は意味をなさなくなります。代表質問での安立議員の再質問に対し、市長は民間事業者の処理能力の大きさを答弁されていましたが、逗子市で受け入れてもらえない分は自区外の民間事業者に処理委託すればよい、とおっしゃるのは、広域連携はしなくても別によいのだと言っていることと同じではありませんか。
第2に、ごみ処理広域化実施計画の計画期間は2029年(令和11)年度までの10年間ですが、その間2025年(令和7)年度に名越CCが稼働停止し、実施計画の期間の終了後の2035(令和17)年度頃には逗子CCが稼働停止し、逗子市内での建て替えは行わない、すなわち2市1町の燃やすごみは最終的に自区外・広域圏外処理になるということです。この点に関しては、生ごみ資源化施設を整備して燃やすごみを半減させられるかどうかという問題を別にしても、長期的に安定した廃棄物処理を税金によって執り行う行政として許される選択肢なのか、という点で疑義があります。
実施計画の期間は逗子市CCがまだ稼働している2029年度までなのだからよいのだと開き直るおつもりでしょうか。自区外・広域圏外処理に頼るのであれば、広域連携の意味合いは大幅に減じます。
第3に、民間事業者に大きく依存したごみ処理の危うさについて、もう一度述べさせていただきます。人の確保が難しい昨今の状況下で、いかに民間事業者が最新技術を駆使して省力化を進めても、人の確保の面で苦しい経営に陥るおそれは残りますし、今般の新型コロナウィルス感染拡大のような予期せぬ事態により急激かつ広範に経済が悪化し、民間事業者が立ち行かなることもありえます。大災害発生時に多数の自治体からの処理委託をさばけるのかという問題もあります。複数の事業者と協定を結ぶことで安定性を担保しているとのことですが、どこまでの危機管理になっているか、納得できないところです。
市民に対する責任は?
新年度予算案では一般廃棄物処理施設建設基金新規積立金が1億6570万 円となっています。指定袋の売却益から経費を差し引いた分を積み立てことではじきだされた金額でありますが、ごみ有料化で市民には二重の負担をしていただいて、これまで述べたような責任放棄ともいえるごみ処理行政で済ませてよいとは思えません。
地域福祉の推進に攻めの姿勢を
続いて、市長が、令和2年度予算を、「まちの未来のための守りと攻め」をテーマに編成したとされているので、それに沿って述べます。
市民生活を守る「守り」の施策は、民生費においては義務的経費の率が高くなることを前提としても、形容矛盾を承知で言えば、もっと攻めの姿勢が必要ではないでしょうか。市民税の内訳は、個人市民税の税収額が法人市民税の10倍近いのが現状で、それ故市長は「働くまち鎌倉」を強調されているのでしょうが、逆方向から見れば、市税をそれだけ負担してくださっている住民が、高齢になられた時に「鎌倉市に住んでいてよかった」と思えるようなまちづくりをしていかなければならないということではありませんか。介護保険制度の枠内での取組みとは別に、地域福祉の推進に市の独自性を出していくことが求められていると思います。地域福祉計画の策定に取り組んではいても、そのビジョンがなかなか見えてきません。
防災―斜面地対策
防災については、昨年秋の台風15号、19号の被害から、風水害への備えや樹林管理・斜面地対策の緊急性への認識が高まっているところです。今年2月の逗子市の市道わきの崖の崩落事故も他所事ではありません。材木座の第一中学校の通学路に面した法面の整備工事に向けた予算がようやく計上されました。安全対策を求める陳情が採択されてから3年3か月が経っており、市有地でない斜面の安全対策の課題の大きさを物語っています。危険度が高い民有斜面地の対策には市が危機意識を持って関与していただきたいと思います。
台風15号に起因する玉縄3丁目の崖崩れの復旧では、現在調査設計業務が行われており、当初予算で警備業務委託料5900万円が計上されています。本復旧工事の経費は、施工方法が決まってから補正予算で対応するとのことです。2004年(平成16年)の台風23号で崩れた場所です。事故後に財政調整基金を切り崩して行った復旧工事が崩落の再発を防げるものでなかったことを重く受け止め、今度こそ手抜かりなく恒久的に安全が確保できる工事を実施してください。
「子どもがのびのびと自分らしく育つまち」ー青少年はどこで?
一方、鎌倉の未来を創るという攻めの施策には、子育て・教育に関するもの、深沢地域整備事業やスマートシティ構想の策定などが位置付けられています。未来を担う世代である子ども・青少年関係の施策と共に、将来的な歳入増を期待して投資を行う取組みを「攻め」とお考えなのだと理解しました。
子どもに関わる施策では、現年度議案で上程された「子どもがのびのびと自分らしく育つまち鎌倉条例」案について、子どもが主体の条例ではないという視点で反対致しました。
子どもを総合的に支援することをうたった条例であるならば、例えば、児童虐待の防止に向けた体制の整備がまだ間に合わないというのは残念な状況ですし、子どもが学校や家庭以外で安心して過ごせる地域の居場所が全く不十分な現状が問われることになります。廃止議案が否決された玉縄青少年会館について、青少年の利用が少ないと説明されましたが、そもそも高校生、中学生にとって魅力的な居場所となりうる公共施設が本市にはありません。以前にも武蔵野市の武蔵野プレイスを紹介しましたが、東京都の青少年施設を見てしまうと、その違いに愕然とします。
また、放課後かまくらっ子推進事業で青少年に放課後かまくらっ子事業にプレイリーダーのような役割で参画してもらうという構想は、小学生には好評かもしれませんが、参画する青少年にとってはどうなのだろうと首をかしげるところです。教育者を目指すような大学生に主体的に関わってもらうのなら良いですが、大学入試改革で、ボランティアを含む課外活動の実績を書き込む調査書が重視されることの影響で、高校生がボランティアとして参加することを見越したものであるとしたら、子どもの権利条約がうたう子どもの最善の利益の尊重とはかけ離れたものであると言わざるを得ません。
GIGAスクールのマイナスの側面にも目を向けて
さらに言えば、GIGAスクールです。世田谷区は、GIGAスクールに手を挙げず、従来やってきたビーワイオーディBYOD (Bring your own device) で進めると聞いていますが、そのように独自路線を行く自治体は限られており、鎌倉市にとってはGIGAスクールしか選択肢がなかったと受け止めてはいます。
しかし、子ども達の育ちや学びにとってどのような効果が期待できるか、どのような活用の仕方が適切で効果的か、といったことについての議論や検討がされないまま、端末が調達され、学校にWi-Fi環境が本格的に整備されるのは、子ども達のことを最優先に考えた結果ではなく、国や業界の都合や利益が優先された結果に他なりません。子ども達が関心のあることを主体的に調べたり、達成感を感じたり、個別に習熟度に応じて学んだりとプラスの側面があることは否定しませんが、同時に子どもたちの成長にとってマイナスの側面があることを認識した上での導入であってほしいと考えます。
スマートシティ構築が自己目的化しないように
「攻め」の施策では、スマートシティも気になるところです。本市では、昨年11月に特命の「スマートシティ担当」を設けて庁内に検討組織をつくり、第4期基本計画に鎌倉版「スマートシティ」の構築に向けた取組を位置づけています。
国は、スマートシティをSociety 5.0の先行的な社会実装の場と位置付けていますが、鎌倉版「スマートシティ」の構築は、Society 5.0の先行的な社会実装を行うことを目的にするのではなく、あくまで市が抱える社会課題を見極め、その課題を解決する目的を持って行うものであると思います。まちの課題解決のために、ICT(情報通信技術)、 AI(人工知能)、ビッグデータなどを道具・手段として活用した結果、スマートシティの様相を呈したまちになっていた、という順序であるべきものでしょう。
重要なのはスマートシティを名乗ることではなく、取組むべき社会課題を適切に見極めることです。新年度予算の代表質問で、取り組むべき社会課題とは何かと再質問したところ、市長は「人口減少、少子高齢化、防災減災、公共施設・社会インフラの老朽化、気候変動、環境負荷の低減といった山積する社会課題に対応する」と答えられました。社会課題をこのように総花的に捉えているのは、まさにSociety 5.0の発想なのですが、鎌倉市、あるいはもっと限定して深沢地区、梶原四丁目、旧鎌倉の交通不便地域といった地域の特定の課題をまず見極めることが大切ではないでしょうか。スマートシティの形成自体を目的化しないことを求めます。
以上、新年度予算についての問題提起をもちまして反対討論を終わります。