鎌倉市、店舗への思い切った家賃補助

4月16日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大されました。
また、同日、政府の緊急経済対策の柱が、既に閣議決定された「減収世帯に30万円を給付」案から、「所得制限を設けず、1人当たり一律10万円を給付」案に変更され、補正予算の組み替えが行われることが明らかになりました。
鎌倉市では、松尾市長が臨時記者会見を行い、新型コロナウイルス対応策として、経済・福祉・教育分野の約25項目の独自対策を発表しました。

真っ先に必要だったのは、休業要請と補償のセット
ここに至って今更ながらに思うのは、外出自粛を可能にして感染の拡大を防止するとともに、生活の疲弊を招かないようにするために真っ先に必要だったのは、「休業要請と休業補償をセットで行うこと」だった、ということです。
特措法24条9項に基づき都道府県が行う協力要請で、休業要請に応じた事業者に支払う感染症拡大防止協力金は、東京都が交付を決め、神奈川県などの他の自治体がこれに続きました。
休業補償そのものではありませんが、似た性格の「協力金」です。
しかし、本当は、国が改正特措法の成立を目指した頃から、緊急事態宣言をする・しないに関係なく、財政的な手立てを講じるべきだったのではないでしょうか。
外出自粛・休業の要請を始めた時点で、「補償はしますから、安心して休業してください。廃業や解雇・雇止めはしないでください」という強いメッセージが発せられるべきでした。
(国は現段階でも休業補償ではなく、持続化給付金や雇用調整助成金での対応をはかっています。)

解雇を防ぐ、廃業を防ぐ
解雇・雇止めが広がることが本当に心配されます。
事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の雇用を維持する場合に、休業手当・賃金等の一部を助成する「雇用調整助成金制度」。
従来あるこの制度に、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主に対する特例措置が導入されました。
従業員を解雇していない場合の助成率が期間限定で高く設定(中小企業で9/10など)されています。
しかし、手続きに通常2か月程かかるため、4月13日までに約11万8千件の相談が寄せられたものの、事業主からの支給申請は10日までに463件、決定は3件にとどまっているとのことです。
国は、制度の活用促進と迅速化に危機感を持って取組むべきです。(※18日午後、「雇用調整助成金の手続き大幅簡略化」のニュース飛び込む)

また、店舗や事務所を賃借している事業者が休業すると、大きくのしかかる負担が家賃です。
欧米では、家賃未払いを理由とした退去要請の禁止や家賃の支払い猶予に向けた対策を講じている国が多くあり、ドイツでは、家賃の支払いに苦慮する小規模自営業者がオンラインで申請すると、最大1万5千ユーロ(約180万円)がスピード給付される制度が導入済です。
長引く休業で、多くの事業者が廃業に追い込まれる「コロナ不況」を回避するための対策として、家賃の負担軽減策は重要です。

鎌倉市、市内店舗に全国で最大規模の家賃補助
冒頭で触れた、4月16日発表の鎌倉市の独自対策の中で注目されるのが、(仮称)中小企業家賃支援給付金です。
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kisya/data/2020/documents/corona20200416-1.pdf
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kisya/data/2020/documents/corona20200416-2.pdf

市内で店舗を賃借して商業を営む中小事業者を対象に家賃相当額を2か月間支給するものです。
支給額は、1か月あたり上限50万円(平成31年1月1日・令和2年1月1日に本店所在地を市内で登記している事業者の場合)
または25万円(それ以外の事業者の場合)です。
最大で100万円の家賃補助は全国で最も手厚く、市長は、「鎌倉市への来訪自粛を呼び掛けており、市内事業者への来訪者減少の影響は大きい。観光地で家賃が高いことに配慮した」と述べています。この給付金に約2億円を充てるとのことです。
思い切った支出ですが、自治体がそれぞれの状況に応じた対策を講じることは有意義であり、
感染症拡大が一旦収束した後の「冷え込み」の回復に向け、よい結果につながることを願います。