感染抑制と業務継続の両立にはPCR検査の拡充が必要では?
国会審議は連日コロナ対策
総額19兆円の第3次補正予算案は、本日1月28日に成立の見通しです。「Go To」事業を撤回し、医療機関や生活困窮者への支援を盛り込むように求めた野党の予算組み替え動議は、反対多数で否決されました。
一方、感染症法の改正案については、感染者の入院拒否への懲役刑の導入に野党が強く反対していることを受けて与党が導入見送りの調整に入ったとのことです。
また、昨日は河野太郎行政改革相が、3月下旬からとしていた65歳以上の高齢者への接種の開始時期を「早くても4月1日」とする方針を全国知事会に説明しました。「ワクチンの供給スケジュールがなかなか固まらない」とのことで、自治体による高齢者向けの接種会場の確保は3月中は不要になる見通しです。
高齢者施設入所者への接種
前々回・前回と鎌倉市議会で新型コロナウイルスワクチン接種事業の補正予算が成立したことを書きました。
1月25日には厚労省による2回目の「接種体制確保についての自治体説明会」が開催されました。説明会資料は厚労省のホームページに掲載されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000726452.pdf
ざっと目を通したところ、「高齢者施設の入所者への接種の進め方」が新たな項目として載っていました(p40~)。
22日の総務常任委員会で施設入所の高齢者への配慮の必要性についてたずねましたが、具体策が確認できました。
ワクチン接種の効果はあるとしても、まだ先
今後、ワクチン接種に膨大なお金と人が投じられます。
神奈川県は1月9日に濃厚接触者の追跡調査の範囲を縮小する方針に転換していますが、その背景には感染者の大幅増で業務量が急増した保健所の負担軽減がありました。本当は、保健所業務に対するお金と人の追加が必要です。
お金と人の追加が必要なのは、PCR検査も同様です。
政府は、ワクチン接種を感染症制圧の切り札に掲げていますが、感染抑制と業務継続の両立にPCR検査の拡充が必要であることには変わりありません。
1月23日の朝日新聞の夕刊には米国の名門コーネル大学の取組みが「徹底した感染対策を行って寮生活や対面授業を可能にした」として紹介されていました。
大学を閉鎖したままオンライン授業を続けてよいのか―という問題意識で、研究チームが立ち上がって対面授業再開への感染抑制モデルが完成し、効果をあげているという内容の記事です。
研究チームが、感染を押さえられる空間の占有率を算出して席数や配置を工夫しましたが、決め手はやはりPCR検査。
学部生は学内のPCR検査施設で週2回PCR検査を受け、陽性者は保健当局の指示に従い隔離されます。昨年9月に検査を始めてから感染者はどんどん減少し、対面授業を続けても陽性率は1%以下に抑えられているそうです(神奈川県の現在の検査陽性率は12.74%)。
プール方式のPCR検査
同大学で実施されているのは、複数の検体をまとめて検査し、陽性が出た場合だけ個別に再検査する「プール方式」で、これにより1日に7千件の検査能力を確保しているとのことです。
プール方式によるPCR検査は、世田谷区が1月13日から23区で初めて始めています。対象は、介護や障害者施設のうち、通所型や訪問型などで働く約1万5400人で、区が委託した民間検査機関から検査を希望する施設に検体採取キットを送付、自己採取した唾液4検体分を1本の試験管に入れて検査するという方法で、陽性が出れば、あらためて検査します(下図参照)。
世田谷区では、国がプール方式を承認しなかったため、都の補助金を活用して始めましたが、1月22日、厚労省はプール方式を国が費用負担する行政検査として認める通知を都道府県に出しました。感染拡大地域で、感染者が出ていない医療機関や高齢者施設で陽性者がいないか調べる一斉検査(スクリーニング検査)などでの使用が対象とのことです。
遅きに失した感がありますが、必要な方針転換であり、鎌倉市を含む神奈川県内自治体で実施が広がることが望まれます。
国の第3次補正予算は、コロナ禍後の経済対策に11.7兆円も充てているのに対し、感染症拡大防止策には4.4兆円です。今やらなければならないことの見極めができていないと言わざるをえません。