コロナワクチンの接種をめぐって

接種予約受付で市に批判が殺到
鎌倉市は、65歳以上の市民約5万4千人に対するワクチン優先接種の第1回予約受付(80歳以上対象)を5月10日に、第2回予約受付(65歳以上対象)を5月17日に実施しました。

第2回は全体で約8,000人分の予約を受付けることになっていました。
WebとLINEでの受付は、午前零時は2000人分、朝9時は約5500人分でしたが、両方とも10分ほどで枠が全部埋まって終了しました。
電話受付は約500人分の枠でしたが、つながらない状態が続いた末に午後4時前に埋まり、防災行政用無線で受付終了の放送が流れました。

WebとLINEで午前零時から予約を受付けたことについては、Web予約サイトの「重要なお知らせ」でしか発表していませんでした。システム稼働の詳細が判明していなかったため、ワクチン接種を特集した「広報かまくら5月1日臨時号」では知らせることができなかったとのことです。

周知の仕方が不十分であったことに対する批判の声はとても大きく、市はホームページに周知不足についての「お詫び」を掲載しました。

6月17日の第3回予約受付の開始時刻は、電話・Web・LINE共通で午前9時に統一されました。また、65歳以上の接種希望者でこれまで予約が取れていない人が予約できる約25,000人分の枠が確保される予定です。

ワクチン接種予約受付開始日時のサムネイル

鎌倉市のトップページに掲載されている第3回予約受付開始日時

高齢の方ほど予約が取りにくい
予防接種を受けるか受けないかは個々人の判断に委ねられていますが、国には接種を希望する人が受けられるようにする責任があります。
しかし、国の対応の拙さでワクチンの確保は遅れに遅れています。自治体には段階的に供給されますが、ハッキリした見通しを立てにくい状況です。。

隣の逗子市では、少ない予約枠に予約が集中しないよう、接種券を65歳以上の市民(約2万人)に一斉に発送せず、ワクチンの供給量に応じて接種券を発送し、65歳以上の人の中でも年齢の高い人から受けられるよう調整しています。

予約受付の処理能力ではWeb予約が電話受付よりも優っているため、予約枠ではWebの割合が電話よりも大幅に高く設定されます(※注)。80歳以上で電話予約しか選択肢がないために予約が取れていない方は、第3回でも御苦労されるおそれがあります。逗子市のように接種券発送時期をずらすのは良い方法であったと言えます。

自治体が対応に苦慮する状況は全国共通ですが、鎌倉市はもっと工夫や配慮が必要でした。

※注 5月25日開催の教育福祉常任委員会協議会でコロナワクチン接種担当課長に番外で質問して確認したところ、電話での予約受付に要する平均時間は、シミュレーション時は1人10分、5月17日の実際の受付時には1人15分要したとのことです。予約枠でWebの割合を大きくしている根拠として情報提供すべきデータであると思います。課長は、電話予約しか選択肢がない方に配慮した受付方法を別途考えていることを明らかにしました。)

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付記:ワクチン全般についての考察
予防接種による集団予防効果が重視される疾病もありますが、予防接種を受けるか受けないかの判断は、基本的に個々人(幼児・子どもは保護者)が感染・発症予防効果というメリットと副反応などのデメリットを考慮して行うものです。

コロナワクチンについては、個々人の判断以前の段階。政府が外国企業のワクチンの確保に後れを取る中で、ワクチンの国産化も進んでいません。
この現状に対し、「過去において予防接種の副反応による健康被害の多発から集団訴訟が提起され(1992年に国が敗訴)、予防接種への警戒感が社会に根付き、行政も慎重な対応をとるようになったことが、日本においてワクチンの研究・開発が進んでいない背景にある」という指摘がここぞとばかり広まっています。

このような背景が語られたとしても、外国企業のワクチンの確保に後れを取った言い訳にはなりません。また、ワクチン後進国・ワクチン・ギャップといった言葉で危機感が煽られる中で、予防接種法に基づく定期接種のワクチンは、2000年初めの8疾病から、現在では14疾病(公費接種のA類)でにまで増えています。

気になるのは、深刻な副反応の発生で接種の積極的勧奨を控えることになっているHPV(子宮頸がん予防)ワクチンの接種が大幅に増加していることです。
昨年10月、厚労省は接種対象者に個別通知を行うよう自治体に通達しました。これを受けて鎌倉市でも通知を行い、2018年に25件、19年に54件だったHPVワクチン接種件数が2020年に330件に急増しています。厚労省のリーフレットが送付されたことと、折からのコロナ禍でワクチンへの期待感が疾病を問わず高まったことが影響していると思われます。

繰り返しますが、予防接種を受けるか受けないかは、感染・発症予防効果というメリットと副反応などのデメリットを考えて個々人において判断すべきものです。判断のためには偏らない適切な情報提供が必要です。
コロナワクチンについては、大半の人が接種のメリットがデメリットを上回ると考える状況があり、特に高齢者の間で接種が進むことが望まれます。
しかし、それは承認されている全て疾病のワクチンにおいて接種のメリットがデメリットを上回ることを意味するものではありません。
HPVワクチンの接種については、今後の動向を注意深く見ていかなくてはならないと思います。