多くの人に知ってもらいたい携帯電話中継基地局条例

「鎌倉市には携帯電話中継基地局条例があります!」という記事を2014年8月26日付で本サイトに掲載しています。
二階堂の旧江ノ電分譲地の縁に位置する市の道路管理地に持ち上がった基地局設置計画を巡る動きと基地局条例について報告した記事です。
鎌倉市には携帯電話等中継基地局条例があります! | 保坂れい子 (kanagawanet.jp)


基地局設置が加速化?!
それから7年。
基地局設置を巡って、周辺の住民の方からの相談が再び増加しています。次世代通信規格「5G」の商用サービスが2020年3月から開始となり、携帯電話各社(特に後発の事業者)が5G通信エリアの拡大のため基地局設置を加速化していることが背景にあると思われます。

携帯電話中継基地局から発生する電波の強さは、スマートフォン・携帯電話等の端末から発生する電波の100分の1程度ですが、身体が浴びる電波の量は「強さ×時間」ですから、弱い電波でも24時間浴び続ければ被曝量は増えます。
また、住居と基地局の位置関係によっては健康に影響する電波の強さになることを、多くの事例が示しています。

さらなる懸念は5Gです。5Gの電波は未解明な部分が多い上、電波の性質から基地局を低い位置に短い間隔で設置する必要があります。
 

住民が知らないうちに携帯基地局が立たないように
鎌倉市には他市には例を見ない「携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例」があります。
この条例と条例施行規則には、次のことが規定されています。

携帯電話等の事業者は市内で基地局を設置・改造しようとするときは、計画の概要を事前に「基地局の高さの2倍の範囲の近接住民」と「近接住民が属する自治町内会の会長」に説明して周知に努めること

事業者は必要に応じ、自治町内会に計画の概要説明と周知に必要な資料を提供すること

事業者は、自治町内会から求められたときは、説明会を開催すること

 

しかし、近接住民の範囲は極めて狭く、「計画を知らされないまま、近くに基地局が立ってしまった」という住民からの苦情はあとを絶ちません。
鎌倉市は、毎年度のはじめの自治・町内会長の皆さんの会合で条例について紹介し、事業者からの訪問があった場合には説明会の開催を要請できることを伝えているとのことです。
説明会が開催されれば、より広い範囲の住民が建設計画の内容を知り、懸念されることを事業者に伝えることができます。

「そんな条例があったのか」「どうして条例が作られたのか」と気に留める人が増えることを願います。

条例の全文や施行規則は、鎌倉市のホームページに掲載されています。
鎌倉市/携帯電話等中継基地局について (city.kamakura.kanagawa.jp)


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鎌倉市携帯電話等中継基地局条例 アーカイブ

条例の規定や運用の見直しについて関心をお持ちの方に向けたアーカイブです。

(1)条例の制定を求める陳情(平成20年陳情第11号)

鎌倉市が条例の策定に取り組むことになったのは、2008年9月議会で「条例の制定を求める陳情」が総員の挙手により採択されたからです。
陳情提出者の「携帯基地局の電磁波を考える鎌倉の会」の代表は電磁波過敏症を発症して都内から北鎌倉に転居してきた私の友人で、陳情の文面は彼女と私が共同で起案しました。

「予防原則に基づき基地局が発する電波による健康被害の防止をはかる条例」では実現へのハードルが高すぎると判断し、「基地局が発する電波の影響が及ぶ範囲の住民に対する説明会を開催し、事業計画が近隣住民の合意と理解の下に進められるよう義務づける条例」の制定を求めました。
陳情1ページのサムネイル

陳情2ページのサムネイル

(2)条例の成立

陳情採択後1年半を要して、2010年3月25日の市議会本会議で条例案が可決し、4月1日から施行しました。
条例案可決・新聞記事10.3.26のサムネイル

 

(3)条例の改正を求める陳情(平成24年陳情第21号)

条例に予防原則の理念は掲げられませんでしたが、「住民が基地局建築計画を着工前に知る権利」を保障することで条例が活用されることを期待しました。しかし、条例施行後1年半を経て、説明会が開催される事例が少ないことが明らかになりました。
そこで2012年9月定例会に条例の改正を求める陳情を提出しました(市議会議員になる前年です)。

この陳情で求めたのは次の2点。
事業者が近接住民の属する地縁団体の所在エリアの住民に対し、地縁団体を代表する者を介することなく、直接的に工事計画の概要を説明し、周知に努める義務を負うようにすること(自治町内会長が説明会の開催を要請しなくても住民に対する説明会を開催すること)

近接住民等への説明責任とその報告は、手続として行われれば事足りるのではなく、近接住民等の理解を得ることをもって紛争を未然に防止するという条例の趣旨を全うするためのものであることを明示すること

この陳情も多数の挙手により、採択されました。
しかし、陳情の採択にもかかわらず、上記2点は具体的に進展せず、今日に至っています。

なお、本会議での採決に先立って総務常任委員会で行われた「陳情審査」は、この問題に関心のある方には参考になると思われるので、長文ですが紹介します。
鎌倉市議会の会議録の該当ページ➡平成24年総務常任委員会( 9月14日) (kensakusystem.jp)
※陳情審査は左のバーの№352の山田委員長の発言から始まります。№352をクリックしてからページの一番上の「全文表示」をクリックしてください。