知る権利の保障と差別発言ウェブ議事録掲載問題

元鎌倉市議の差別発言をめぐる国賠訴訟は原告勝訴で決着、ボールは市議会に
横浜地裁が元鎌倉市議の発言を「差別的」であると認め、鎌倉市に賠償命令を下した国家賠償請求事件は、原告の在日コリアン男性も被告の鎌倉市も控訴せず(被告の元市議には控訴要件がなかった)、原告勝訴が確定しました。

原告は市議会のウェブサイトで公開されている議事録の当該部分の削除も求めましたが、横浜地裁判決は、
ウェブサイトにおける会議録の掲載は、(中略)市政の適正な実施と住民等の知る権利の実現に資する重要な役割を果たすものというべきである
このような会議録の掲載の趣旨及び役割に照らせば、本件発言が国賠法上違法と評価されることを前提としてもなお、会議録の掲載をしたこと自体までもが国賠法上違法になるとまでは言えない(下線の明言を避けた表現は判決原文のまま)
として、議事録削除については請求を棄却しました。

2013年5月~16年5月任期の市議会議員の表決写真(議会facebookより転載)

 

知る権利と表裏一体の表現の自由についての当該元市議との論争
司法の場では決着しましたが、「試合終了」ではなく、ボールは市議会に投じられています。
市議会のウェブサイトの管理権限は市議会(国賠訴訟法上の被告にはならなかった)にあるからです。

ここで問題になるのは、地裁判決が「住民等の知る権利」に言及していることです。
「知る権利」は日本国憲法では明文化されておらず、憲法21条表現の自由によって保障されていると考えられています。
被告であった元市議は2016年2月議会に「国会及び日本政府に対して表現の自由の堅持と保障を求める意見書の提出」を議員提案し、私は反対の立場で議案質疑を行いました。

その時のことを詳細に振り返った本サイトの記事(2019.8.12)↓をご覧いただくと、ウェブ議事録削除の是非と問題の本質がつながっていることをご理解いただけると思います。

表現の自由について考える(& アーカイブ) | 保坂れい子 (kanagawanet.jp)

※前半は「表現の不自由展」から書き起こしており、後半が元市議による意見書提出と議会発言問題についてです。