指定管理者制度の運用について問う(6月議会 振り返り②)
6月9日に行った一般質問では、指定管理者制度の運用についても取り上げました。
増加する導入施設
2003年の地方自治法の改正で、市が指定する団体(=指定管理者)に公の施設の管理運営を行わせることができるようになりました。
公の施設の管理は、それ以前は直営または一定の要件を満たした出資法人等への管理委託に限定されていましたが、出資法人以外の民間事業者に門戸が開かれました。
指定管理者は、施設の使用許可などの行政処分も行うことができます。
施設は市有のまま、すなわち施設の設置者は市のままで、指定管理者と協定を結び、自転車駐車場など利用料金だけで賄われる施設を除き指定管理料を支払って管理運営を委任・代行させるものです。鎌倉市における指定管理者制度導入施設は、15種別に及んでいます。
鎌倉芸術館の指定管理者の交代
今回指定管理者制度を取り上げた理由としては、制度導入施設が大きく増えている現状があります。
もう一つには、鎌倉芸術館の指定管理を3期15年間にわたって担ってきた事業者が、今年4月を起点とする指定期間の指定管理に名乗りを挙げなかったことに対し、事業者サイドの事情であるとして済ませ、管理運営を代行してもらってきた市側のあり方を振り返った検証がされていないのはおかしいと感じているからです。
この間約2年、コロナ禍という施設運営に多大な影響を及ぼす特別な状況もありました。本来であれば、市の対応、例えば指定管理者との協議が十分であったかなどの検証を行い、それを現在の指定管理者との関係に生かすべきものと考えます。
指定管理者と市の所管課との協議は?
市と指定管理者との協議の実態について確認したいと考え、施設を修繕する必要があった場合の協議および、管理運営全般にかかる市と指定管理者との定期的な会議について質問しました。
一般質問に先立って行った情報公開請求で、公開文書中に芸術館の修繕に係る指定管理者からの報告に対する「回答」や「協議の記録」がなかったことに触れたところ、「芸術館については設備等の修繕は市の予算で実施しており、日常的な情報共有は十分図られているという観点から協議記録という形では残していない」との部長答弁でした。
市と指定管理者との定期的な会議については、複数の課をピックアップして所管の指定管理者導入施設の状況を聞きました。開催頻度はそれぞれでしたが、定期開催された記録は行政文書として取り扱っているとのことでした。
それは当然のことなのですが、開館日数や利用者数、人員配置などの定型的な報告を確認しあうことにとどまらず、指定期間にわたる施設の管理運営上の課題や改善策を話し合う場も年に1,2度は持たれてしかるべきかと思います。
外部委員による中間評価
藤沢市では、指定管理期間の中間年に、外部委員からなる「公の施設指定管理者評価委員会」が評価を実施し、結果を公表、また評価における指摘事項を次期選定時の募集要項等の作成時に活用するとしています。これは本市においても必要な仕組みではないか、と質問しました。
部長からは
①外部評価・第三者評価の実施は、「施設の管理運営が適正に行われているか」「利用者へのサービスの向上と施設の効率的な運営に寄与しているか」を評価する手法として効果的であると認識している
②鎌倉芸術館については、現指定期間(第6期)において、指定管理業務の実施状況を客観的に検証するため、外部の委員によるモニタリングを行う
③外部評価を指定管理者導入施設全体に導入することに向けては、数値的な根拠に基づく評価指標の設定、評価の実施主体の選定、費用対効果などの課題解決に向けて研究を進めているところであり、今後の実施に向けて効果的な手法を検討していきたい ―という、総論と各論が混じった答弁がありました。
もともと、すべての指定管理者導入施設で外部委員による中間評価を一律に行うべきだと考えたわけではなく、中間評価にかける手間や費用は施設ごとの状況に応じて設定すればよい、但し鎌倉芸術館でだけ実施するというのであれば、根拠が不明瞭で公平性に欠く、と感じての質問でした。
むしろ問題意識としてあったのは、「中間評価においては、指定管理者に管理運営を代行させる側の市の姿勢(あり方)も評価の対象とするべきではないか」ということでした。
市には、施設の管理運営における課題を指定管理者と共有し、連携して課題解決に努める姿勢が求められているということを重ねて指摘する質問になりました。
【 追記 】鎌倉文学館の大規模改修と指定管理者
6月20日開催の総務常任委員会では、鎌倉文学館の大規模改修についての報告がありました(今年度は建設常任委員会の所属となったので、議員傍聴席で傍聴)。
経年劣化を踏まえた大規模改修のため、令和5~8年度を閉館期間とする上記スケジュールが示されました。
現在の指定管理期間は令和4年度(2023年3月31日)までで、改修による閉館期間は直営になるとのことです。
委員からは
「文学館の貴重な資料、収蔵品の管理については現指定管理者と協議をしたのか」「改修中は直営とのことだが、収蔵品などの管理には専門性が求められるのではないか」という質問があり、
文化課は、
「改修期間中は市の直営であり、収蔵品などの管理は市として専門性が備わった事業者に委託する」と回答。
「現指定管理者は関係ない」とする姿勢が伝わってきました。
指定管理者制度は、導入により市民サービスの向上につながるのであれば、経費面で大幅な抑制効果がなくても導入は許されると思います(裏を返せば、直営より安くあげるために指定管理料を低く抑えることが市民サービスの低下につながるようでは元も子もありません)。
メリットがあるかどうかを判断するのは、「市民サービスの向上」という観点です。
一方、指定管理者制度のデメリットとしては、
◆市の組織に、施設の管理運営に精通した人材がいなくなるおそれがある。
◆次期指定管理期間に選定されなかったり、文学館の大規模改修による休館のように指定管理者を置かない期間が生じたりすると、指定管理者は経営上の問題(特に雇用問題)に直面する。
➡そのため、複数の公の施設を指定管理することで職員の配置転換などのやり繰りが可能な大手事業者は参入しやすいが、地域限定で事業を展開する事業者はリスクを負う。
➡結果、全国展開の大手事業者ばかりが指定管理者になるおそれがある。
ということが大きいと思います。
そうであるから、
▽現状においては、指定管理者にお任せではなく市として連携を密にすること
▽将来的には、指定管理の受皿になる公益法人等を作るなどの大きなビジョン(※)を持つこと
― が必要なのです。
※これについては、本サイト2021年12月17日付記事「生涯学習センター条例の改正議案が僅差で可決」中に掲載した、生涯学習センター条例改正議案に対する反対討論の中で詳しく論じています。生涯学習センター条例の改正議案が僅差で可決 | 保坂れい子 (kanagawanet.jp)