生涯学習センター指定管理者 指定議案の採決  (6月議会 振り返り④)

ここのところ続けて取り上げてきた鎌倉市生涯学習センターの指定管理者の指定についてです。
6月議会最終日28日の本会議で、指定管理者を鎌倉CITYパートナーズとする議案が賛成14、反対11で可決しました。

採決に先立って行った賛成討論は次のとおりです(小見出しは本稿掲載に当たり便宜的に付記)。
《議案第7号 賛成討論》
疑問点を質したこと
本議案において議会が決めるのは、鎌倉市生涯学習センター条例に定める鎌倉生涯学習センターほか5施設の指定管理者を、相鉄企業株式会社および小学館・集英社プロダクション(株)を構成団体とする鎌倉CITYパートナーズとするかどうか、ということです。
私たちネットは、議案上程時および議案が付託された教育福祉常任委員会において指定管理候補者とその提案内容について詳しく質問いたしました。

指定管理者選定委員会における選定にあたっては、応募者に5つの課題を提示し、その解決策を公開プレゼンテーションで発表させて選定の判断材料としました。
5つの課題は、①利用手続き、講座申込み方法が煩雑であること②夜間職員不在により相談体制等が脆弱であること③夜間の稼働率の低さ④現役若者世代の利用率の低さ⑤今日的な課題の講座や情報発信、ICTの活用が急務であること でした。
これについては、議案質疑の際に、「指定管理者制度への移行の理由付けとして、民間の事業者のノウハウをもってすると解決策を提示しやすいものを抽出したものではないか」という疑問があることに言及しました。
その疑問は、かなりの部分解消されたものと思っています。

サービス向上が若年・現役世代に特化してはいけない
指定管理者の指定に当たり何よりも重視しなくてはならないのは、利用者サービスの向上の視点です。
申すまでもなく、比較的年齢層が高い現在の利用者・利用団体に対するサービスの向上が諮られなければなりません。
この点については、若年・現役世代に働きかける取組が期待できると同時に、全世代に向けたサービスの底上げにつながる提案がされていることを確認しました。

老朽化した施設の維持管理の重要性
5つの課題の中には含まれていませんでしたが、各施設が老朽化している現状を踏まえれば、施設設備・機材・付属設備等を良好な状態に保つことが指定管理業務の中で極めて重要な意味を持っております。
この点において鎌倉生涯学習センターの舞台管理を34年間にわたって担い、施設管理の実績が豊富な相鉄企業が構成団体であることは安心につながります。とはいえ、行政には施設修繕・維持管理については指定管理者との密な連携を求めるところです。

よそと同じプログラム・企画になる?
一方、懸念材料として確認の必要があると考えたのは次の2点でした。

ひとつは、指定管理候補者が、県内外で多くの生涯学習施設の指定管理者になっており、プログラム・企画のメニューやノウハウを豊富に持っているとしても、それを横展開されるのは鎌倉市生涯学習センターにふさわしいのだろうか、ということです。

この問いかけに対しては、指定管理候補者が全体の事業計画の中で、「講座をきっかけに同じ趣味や関心を持つ人をつなげ、新たな地域との繋がりをつくるサークル化の推進」や「鎌倉市の地域特性を活用した学習機会の提供や市民の関心を踏まえた企画」を提案していることが選定委員会で評価されたという説明がありました。

自主事業で利用枠にしわ寄せ?
もう一つは、指定管理者の収入につながる自主事業の開催によって市民の貸室の利用枠にしわ寄せがあってはならないということです。

これについては、▽集会室やホールなどの貸出対象施設は、利用団体による利用が優先し、空いている枠で生涯学習推進委員会の企画による講座をやる ▽自主事業は、それでもなお使用日の2カ月前になっても使用許可申請がなされていない施設において実施してよいとされていることを確認しました。
また、自主事業として予約の入っていない部屋を自習室として無料で利用できるようにするなどの提案は、高評価に値すると思います。

以上のような確認を経て、本件指定管理議案については賛成するものです。
その上で、公の施設の指定管理者制度ついて少し申し添えます。 

将来的な指定管理について
2003年の地方自治法の改正以前の公の施設の管理運営は、直営または一定の要件を満たした出資法人等への管理委託に限定されていましたが、指定管理者制度ができ、出資法人等に限定せず、自治体が指定する団体(=指定管理者)に管理運営を行わせることができるようになりました。
制度上は多様な民間事業者に門戸が開かれた訳ですが、実態として指定管理に参入する事業者の形態に多様性が見られるのか、気になるところです。
複数の公の施設を指定管理することで職員の配置転換などのやり繰りが可能な、全国或いは広域展開の大手事業者以外は手を出しにくい制度になっている傾向が見られます。
導入施設の設置目的や特性、規模に応じ、地域限定で事業展開する事業者や非営利の法人も含めた多様な事業者が参入できる仕組みであることが望まれます。

特に生涯学習センターのような施設は、今日では、市民による主体的な活動を支援する意味合いが強く、市民自らが管理運営に参画する市民協働型のスタイルが検討されていくべきものと考えます。たとえば将来的な施設の整備においては市民活動支援センターまたは市民協働推進センターとの併設あるいは一体化、管理運営においては市民活動支援の中間支援機能を持つNPOや公益財団などが指定管理者の構成団体に加わるなどです。

実践している自治体は数多くあるので、鎌倉市としても将来的なビジョンと捉えてほしいと思います。

10月から適用の利用区分については必ず検証を
最後に申し上げるのは、指定管理議案としては賛成するものの、多くの利用団体から「従前より使いにくくなる」と批判されている10月から適用の利用区分については、賛成していない、ということです。
2月定例会の最終本会議で可決した付帯決議にあるように、新しい利用区分適用後一定期間を経て、教育委員会として責任をもって市民・利用者の意向調査を行い、利用区分の再度の変更が必要であると判断された場合は、できる限り速やかに変更を行うことを求めるものです。

―・―・― 以上が保坂の討論 ―・―・―

指定議案に反対の理由は?
この議案で賛成の討論を行ったのは2会派でしたが、反対の立場で討論を行ったのは1会派のみでした。

鎌倉市生涯学習センターは、現在の名称に変更された際、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)30条を根拠法とする公民館としての教育機関の位置づけのままであることが確認されている。にもかかわらず、なぜ市職員が運営から手を引くのか。どこでどういう議論がなされたのか。センター運営の課題解決のためには指定管理者制度の導入が必要だというが、直営のままで解決できないのかの議論がされたのか。

市民に身近な社会教育施設であり、人事について一定のルールを作り継続性のある専門職の配置を考えるべきである。市の施設から市職員がいなくなることは、長い目で見て市の発展、市民の利益が損なわれることにならないか。

鎌倉芸術館の今期の指定管理者がなかなか決まらなかった例からも、継続性や安定性の問題で指定管理者制度が問われている中、社会教育の中核的施設から市の職員がいなくなることは問題だ。
―というのが討論の主な論点であったと思います。

いささか乱暴な表現になりますが、「そもそも直営であるべき施設なのだから指定管理者にやらせてはダメなんだ」という主張に聞こえました。
但し、下線部については同感するものです。
そして、この指定管理者指定議案(指定管理者制度の導入を盛込んだ条例改正議案は昨年の12月議会で僅差で可決し、本件は具体的な事業者を指定する議案です)に反対した他の2会派と無所属4議員からも、その理由が聞きたかったです。

地教行法・社会教育法の規定に照らすと?

地教行法 (教育機関の設置)
第30条 地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができる。
… 指定管理に移行しても施設の設置者は鎌倉市。この条文と指定管理者制度導入に齟齬はありません。

社会教育法 第5章公民館(目的)
第20条 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
…この条文に照らすと、私の討論の後半は、公民館としての性格よりも「住民主導型の管理運営→住民自治の実現の場としてのコミュニティセンター」志向が強いと言えそうです(誰からも指摘されなかったので、自分で指摘しておきます)。
それは私が、「市民ニーズに適い、市の活性化に資する公の施設」として、図書館・生涯学習支援・市民活動支援・青少年活動支援等の機能を併せ持った武蔵野市の武蔵野プレイスのような複合機能施設をイメージしていることから来ております。