横須賀市のごみ資源化の展開を見てきました

8月2日、神奈川ネットワーク運動・鎌倉と同・横須賀のメンバー10名で、
横須賀バイオマス発電所の見学
横須賀市が新たに始めるプラスチックの資源化についての聞取り
を行いました。

横須賀市議の小室卓重さんがセッティングしてくれたもので、当初、横須賀ごみ処理施設「エコミル」(2020年2月末竣工。横須賀市・三浦市のごみの焼却及び不燃ごみの選別施設)の見学も検討しましたが、コロナ禍による視察受け入れ中止が解除されていないため、こちらは見合わせました。

横須賀バイオマス発電所 発電棟・冷却塔・煙突

横須賀バイオマス発電所
横須賀市浦郷町にある(株)タケエイグリーンリサイクル横須賀バイオマス発電所(以下、横須賀BP)では、木質チップをバブリング流動ボイラーで燃やして発電を行っています。

燃料の木質チップは、相模原市・葉山町・三浦市・横須賀市域の自治体・造園業・建設業等(※葉山町・三浦市は自治体回収)から排出された剪定枝や木くず、神奈川県や静岡県の森林組合による間伐で生じた丸太等を富士吉田市の自社工場および横須賀BP内の中間処理施設で加工したもの(一部は協力会社製)です。破砕機で粉砕されたチップのうち10㎜以下のものは堆肥(土壌改良剤)に製品化されています。

年間約91,000tの燃料チップをボイラーで燃やし、化石系燃料の代替として算出したCO₂排出量削減効果は23,000t-CO₂/年とのことです。発電出力6,950kWは15,000世帯が使用する電力に相当します。

鎌倉市は市内で収集した剪定枝の処理をこちらの会社に委託していましたが、契約書記載どおりの取扱いがされていなかったことが明らかになり、2020年9月からは茅ケ崎市に事業所を置く別の会社に処理委託をしています。

とはいえ、見学を通して伝わってきたのは、社名にも表れているように、木(グリーン)のリサイクルに自社で一貫して取り組んでいる姿勢でした。
また、印象的だったのは、燃やす木質チップが剪定枝、間伐材などの木くず由来のものであることです(構内には、機械臭・重油臭ではなく、樹木や草の匂いが漂っていました)。以前に見学に行った川崎バイオマス発電所(住友系)は、周辺地域で発生する建設廃材から作られた木質チップを主に用いる発電所だったので、脱硝(Nox)・脱硫(Sox)装置も付いており、バイオマス発電所と言っても横須賀BPとは様相がかなり違っていました。

燃料保管庫前のトラック・スケール

燃料保管庫に保管する木質チップは3日分

右端の機械は木屑を破砕する超大型シュレッダー。夏場は草木が多く搬入され、年間を通したチップの均質化には苦労があるようだ。

バイオマス発電所 追加情報

帰宅後に神奈川新聞の県内首長の動向欄を見て、松尾市長が前日(8月1日)「茅ケ崎バイオマス発電所視察」をされていたことを知りました。現在剪定枝の処理を委託している(株)都実業が昨夏に稼働したバイオマス発電所です。こちらも、燃料に建築廃材を用いず、剪定枝や間伐材に限定しているようです(建築廃材を処理できる施設も必要ですが、排ガス処理で大規模化は免れず、立地は限られるでしょう)。

<参考データ>

名称 所在地 発電出力 燃料
川崎バイオマス発電所 川崎市川崎区扇町 33,000kW/h 建築廃材も
横須賀バイオマス発電所 横須賀市浦郷町  6,950kW/h 剪定枝・間伐材など
茅ケ崎バイオマス発電所 茅ケ崎市赤羽根  1,990kW/h 剪定枝・間伐材など

 

横須賀市が民間企業と連携して進めるマテリアルリサイクル

今年4月、プラスチック新法(プラスチック資源循環促進法)が施行しました。
同法では、「設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の各ライフサイクルにおいて、事業者・自治体・消費者それぞれが3R+Renewableを目指す対応を促されています。

「排出・回収・リサイクル」において、市区町村は従来の容器包装プラスチックに加え、製品プラスチックの回収を促されることになります(鎌倉市は、新法施行以前から行っていました)。
分別収集した製品プラスチックは2つの方法で「再商品化することができる」とされており、
1つ目は、容器包装リサイクル法に規定する指定法人に委託し、再商品化する方法
2つ目は、市区町村が再商品化計画を作成し、国の認定を受けることで、再商品化実施者と連携して再商品化を行う方法 です。

横須賀市役所で環境部の担当者から伺った説明によれば、横須賀市は2つ目の方法を採用し、廃プラスチックを回収・自動選別・再生する国内最大級のリサイクルプラントを今秋同市神明町で稼働させる(株)TBM社との連携を決めました。
先ずは今秋以降、モデル地区での実証実験を始めるそうです。

プラントに搬入された製品プラスチックは、破砕 →光学選別(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどに)→粉砕 →洗浄 という工程で、種別ごとのプラスチック・ペレット(マテリアルリサイクルによる再製品化の原料)に加工されます。

これまで、日本の廃プラスチックのリサイクルはサーマルリサイクル(燃やして熱を回収)の割合が圧倒的に大きく、ケミカルリサイクルに分類される手法も、コークス炉化学原料化 ・ガス化 ・高炉還元剤化などであって、マテリアルリサイクルの比率は全体の4分の1程度で推移してきました。
横須賀市の取り組みは、マテリアルリサイクルで従来よりも質の高い製品に再商品化する流れを作ろうとするものだと理解しました。

横須賀市は、「エコミル」の稼働により、それまで不燃ごみとして回収していた製品プラスチックを燃やすごみに変更しました。それがまた(モデル地区から始めてその後に全市展開で)分別収集に戻ります。燃やさずにマテリアルリサイクルの流れにのせることは望ましい方向ですが、横須賀のネットのメンバーからは、市民に対する丁寧な説明を要望する発言がありました。

 

プラスチック新法施行で鎌倉市は?
鎌倉市環境部は、6月に公表した今年度の『ごみ処理基本計画アクションプログラム』において、4月施行のプラスチック新法に対応するため、「環境省等と協議しながらプラスチック資源の分別収集・再商品化計画を作成するとともに、プラスチック製品の製造事業者等との協議を継続し、事業者による使い捨てプラスチックの自主回収・再資源化を促進します」としています。

製品プラスチックの資源化にかかる経費についても圧縮(市費負担の軽減)を図る方向で進めてほしいと思います。