新庁舎等整備基本計画と市役所の位置を定める条例 ( 9月議会報告②)

9月16日開催の建設常任委員会では、「本庁等整備事業の取り組み状況」について、
8月31日に本庁舎等整備委員会が開催され、委員長から松尾市長に対し「新庁舎等整備基本計画(案)及び市庁舎現在地利活用基本構想(案)」について答申があったこと
新庁舎等整備基本計画(素案)と市庁舎現在地利活用基本構想(素案)に対する意見公募(パブリックコメント)の結果と意見に対する市の考え方
―などが報告されました。

順序がおかしいという指摘は妥当か?
「新庁舎等整備基本計画」は、建設常任委員会での報告を経て、市長決裁により9月末には「策定」されます。
新庁舎等整備基本計画は、その前段の基本構想(2019年7月策定)と同様に議決案件ではありません。

では何が議決案件かというと、「鎌倉市役所の位置を定める条例」の改正です。
同条例の「地方自治法第4条第1項の規定に基づき、鎌倉市役所の位置を次のとおり定める。鎌倉市 御成町18番10号 」という規定の下線部分を 深沢地域整備事業用地内の計画地の位置表示にするもので、地自法4条の3項が、この条例の制定・改廃には「出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない」と定めています。

建設常任委員会では、前週の一般質問に引き続き、位置条例を改正しないまま、新庁舎等整備基本計画を策定するのは順序がおかしいという意見が複数の議員から出ました。
新庁舎等整備基本計画は、深沢に本庁舎を整備しようとするものであるため、位置条例が否決された場合は基本計画は意味をなさなくなり、基本計画にもとづいて基本設計などの発注に進んだ段階で位置条例が否決された場合は、多額の基本設計業務委託費等が無駄になる、というのがその理由です。

基本計画は判断材料
しかし、他市の事例では位置条例を改正後に基本計画を策定する進め方が多いからと言って、それが常に適切な進め方であるとは限りません。
市役所などの庁舎の建替えは、庁舎敷地内の駐車場などの空地や別の建物を取り壊してできる空地を利用して行われることが圧倒的に多いのですが、鎌倉市役所現在地ではそれが困難です。駐車場の地下には市内で最も貴重な遺構・埋蔵物が包蔵されている可能性が高いからです。

鎌倉市の場合、位置条例改正の是非の判断は、様々な要素を勘案し、いやがうえにも慎重に行う必要があります。
私は、その判断材料として、新庁舎等整備基本計画の策定は望ましいことだと考えています。

さらに言えば、本庁舎を深沢に移転することの是非の判断には、「現在地の利活用がどうなるか」という問題が不可分です。
本庁舎移転後の跡地に中央図書館を中心に据えたクオリティの高い市民利用施設が整備され、日常的に市民が必要とする行政機能も配置される確証が持てないと、おいそれと本庁舎移転に賛成できません。「市庁舎現在地利活用基本構想」はまだまだ具体性に欠ける部分があるので、今後とも注視し、意見を付していくことが必要です。

新庁舎の基本計画と現在地の利活用基本構想が定まるので、議会はこれらを判断材料に加えて、今後位置条例改正の是非を判断する―ということであり、順序がおかしいということではないと思います。
とは言え、8月31日には、「新庁舎等基本設計とDX支援業務を受注する事業者の選定」等に関する業務の委託先が日本総研を代表とする共同企業体に決まっています(契約金額は9,320万円)。
大きな経費を投入する以上、位置条例改正の提案をいつまでも先延ばしにするわけにはいかないでしょう。

パブコメ結果を独自(?)集計してみました
新庁舎等整備基本計画(素案)の意見公募(6 /11~7 /10)には、104通の意見が寄せられました。
建設常任委員会で報告がされた際、私は「具体的な提案が予想以上に多かったのではないか」と発言しました。所管課からは「寄せられた意見の賛否は拮抗している」との見解が示されました。

所管課が取りまとめた意見募集結果は、1通の意見に含まれる複数分野の意見を分野ごと振り分けたもので、104通の意見総数は211でした。
それはそれで一覧性は高いのですが、私は104人のうちのどれ程の人が基本計画に肯定的で、どれ程の人が批判的、そしてどれ程の人が深沢移転に反対なのか、大まかなところを把握したいと考えました。

そこで「人(提出№)」で寄せてExcel Sheetに入力して人数を数え、円グラフにしてみました(実はこういう作業が結構好きなのです)。
なお、1人が幾つもの意見を出している場合は、最も決定的な意見をその人のスタンスとしてカウントしています。
例えば「具体的な提案」と「質問・どちらでもない」「進め方に批判的」の3項目に該当する人は、「進め方に批判的」を採用し、他の2項目はカウントされないように ⚘マークを記入しました(下記参照)。

結果は次のとおりで、賛否は拮抗。また、「(深沢での整備を前提に)具体的な提案をした人」がかなり多いことを確認しました。
なお、青色に塗られた47人には、基本計画で新庁舎に配置するとしている深沢学習センター・深沢図書館の面積が現在の面積よりも小さいことを問題にして見直しを提案している12人を含みます。

上記の円グラフとは別に、深沢での新庁舎整備に反対する意見を反対理由ごとに集計してみました。
こちらは人数ではなく、挙げられた理由ごとの意見数です。結構バラけており、「現在地でなくてはダメだからダメ」という意見(深緑の14件の一部)は、予想よりも少ない印象です。
「その他※」には、支所の充実や、本庁舎整備以外にお金を使うべき、という意見が含まれます。