大町釈迦堂口遺跡の崩落対策工事

11月11日、建設常任委員会の視察で国指定史跡・大町釈迦堂口遺跡の崩落対策工事の現場を訪ねました。

隧道を浄明寺側から見る

釈迦堂口隧道(トンネル)の上部には鎌倉末期の横穴式墳墓「やぐら」(国史跡)がありますが、1977年に落石があって以降通行禁止となり、その後も法面の崩落などが複数回あって周辺は立ち入り禁止となっています。
今回現地に到着してまず驚いたのは、2018年12月の崩落でトンネル開口部の高さが随分大きくなっていたことでした。

鎌倉市は史跡の保護と公開に向けて2016年度から地質調査を開始し、2021年度予算に史跡環境整備事業として崩落対策費を計上しました。
当初の計画では2カ年で2億円をかけて行う予定でしたが、コロナ禍の影響によるスケジュールの変更や隧道上部に資材を運搬するモノレールの軌道の修正による事業費の増額、掘削に手間取る地質の問題などもあって、大変な中で進めています。

特に大掛かりなのは、隧道上部(橋状の部分)の両側に縦方向の亀裂があって全体が崩落する危険があるため、橋のたもとにあたる地層に立坑を掘削し、そこから橋状部分に向けて水平方向に金属の杭を打ち込む(串刺しにする)ことで補強する工事(ルートパイル工法)です。高台から見下ろして立坑の大きさに驚きました。

ルートパイル工法の立坑(右上)を見下ろす

そのほかに、層状崩落・法面崩落を防ぐため、ロックボルトの打ち込み、岩面の色相に配慮したモルタル吹付、薬剤処理、ネット貼付けなどの工法を組み合わせているとのことです。説明を受けて、元来の景観を損ねない崩落対策をはかっていることがわかりました。

昨年5月には逗子市教委による期間限定公開で、名越切通しの途中にある「まんだら堂やぐら群」を見学し、整備の大変さ(および様々な保全工法があること)と公開の大切さについて感じ入りました。大町釈迦堂口遺跡の公開も待ち望まれます。
(今回は道路課・文化財課の職員の案内で見学できましたが、工事が完了して安全が確認されるまで一般の立ち入りはできません。)

高台の丘陵部。ここを囲むように上・中・下段で60基以上のやぐらがある

唐子やぐら

資材を運ぶモノレール