市役所の位置を定める条例改正の提案時期が問題?!

鎌倉市議会建設常任委員会が12月16日(金)に開催されました。
9時30分に始まって深沢地域整備事業と本庁舎整備事業の2件で夕方までかかり、20時20分に終了。

本庁舎整備事業については、
①「市役所の位置を定める条例」の一部改正議案(以下「位置条例改正議案」と略)の審査・採決
②新庁舎等の整備のスケジュールの報告への質疑
③陳情4件の審査 を行いました。
位置条例改正議案の採決結果は賛成4、反対2の賛成多数でした(この後26日の本会議で採決)。

市役所敷地の「平和の木」

位置条例の提案時期をめぐる意見の錯綜
本庁舎の深沢移転に反対する立場の会派・議員からは、これまで「位置条例を改正しないまま新庁舎整備の基本計画を策定するなどの整備に向けた事業を進めるのは、順番が逆だ」との批判がありました。

ところが、今議会に位置条例改正議案が提案されると、今度は「深沢の土地区画整理事業が計画どおりに進むのか、周辺を含む交通環境が整備されるのか、わからないことだらけなのに位置条例改正議案を提案するのか」という批判に風向きが変わりました。

そして、建設常任委員会では、複数の委員から「どうして今議会に提案したのか」「なぜもっと早い時期(移転先を深沢に決めた後とか、住民投票実施の直接請求があった後とか)に位置条例の改正をしなかったのか」という質問が飛び出した、という展開です。

 

よくあるパターンとは異なる庁舎建て替え
位置条例改正議案の提案時期について、市は「事業費の概算がわからないうちに条例を提案するのは適切ではないという先例がある。基本計画を策定し、その後に設計に当たる事業者を公募により選定する。設計を行う中で金額が明らかになっていくので、そうやって予算がわかってきた段階で提案を行うべきだと思っている」としてきました。

しかし、9月議会では一部の議員から位置条例を改正しないまま基本計画を決めることへの批判があり、9月末に基本計画が策定されたことで次の段階の基本設計の事業者選定や基本設計についての契約で多額の経費が発生することから、前倒しすべきと考えたようです。加えて、議会が新庁舎等整備調査特別委員会を立ち上げたことへの配慮もあったと見られます。「どうして今議会に提案したのか」に対する回答は、このようなところです。

もう一方の「なぜもっと早く提案しなかったのか」については、単純明快な回答はなかったように思います。
これまでの経緯を丹念に振り返れば、この問いかけが意味をなすのか、少々疑問を感じるところでもあります。

単純な理由をひとつあげれば、
全国的に自治体の庁舎が老朽化して建て替えの時期を迎えている中で、現存庁舎の敷地の駐車場などの空きスペースや敷地内または隣接地にある他の行政施設を取り壊すことでできるスペースを利用して建て替えるケースが圧倒的に多いのに対して、鎌倉市の場合は現在地での建て替えが土地利用の諸条件の厳しさからできず、他所に「移転して整備」することになったため ということがあります。

所在地の表示が従前とほとんど変わらないのであれば、まず位置を定めてから建物について検討してもよいし、建物がほとんどできてからの位置条例改正でも問題にはならないでしょう。
しかし、他所で整備する場合は違います。その場所にどれくらいの建物が整備できるか、人々の庁舎へのアクセスはどうか、庁舎を整備した場合の周辺環境への影響はどうか、市民の賛同は得られるのか等々について検討した上で庁舎整備の青写真ができなければ、そこを庁舎の位置として定めてよいかどうかの判断はできないと考えるのが普通ではないでしょうか。

後回しにはできない本庁舎整備
これまでにも述べてきましたが、基本計画策定後の位置条例の提案は妥当なタイミングであると言えます。

本当は、現在地利活用による複合施設整備についても、現在の庁舎の増改築ではなく建替えとすること及び公共部分と民間部分の比率について確認できればよいのですが、基本構想段階では確認できません。それでも現在地に導入する公共機能については基本構想で明らかになったので、判断材料とすることにしました。

建設常任委員会の議案採決にあたっては「小中学校の建替えや市民生活を支える諸施策などを本庁舎整備よりも優先すべきという意見もあるが、市民生活に関わる重要な取組みのための予算を削って本庁舎整備に充てるわけではない。そして、本庁舎整備は、後回しにしてよい取組みではない。最大の理由は、現在の庁舎が震度6程度の地震が発生した場合に、市民の生命に関わる災害復旧活動の拠点となる耐震強度を備えていないことだ」という意見を付して、賛成しました。