選挙公報 虚偽記載容疑は、そのまま告発をし方にお返しします!

「鎌倉市民連絡会議」の共同代表、岩田薫氏が、3月21日に横浜地方検察庁特別刑事部に赴き、私に対する刑事告発状を手渡しました(氏はこれまで色々な刑事告発をされており、告発人の肩書は、以前の刑事告発の際にも使った『行政110番』代表であったとのこと)。
公職選挙法違反の容疑だということでです。

容疑の内容は、氏のブログによれば(告発された私に検察から告発状が示されることはなく、ブログを通して知った)、
2021年4月の鎌倉市議会議員選挙で、保坂は鎌倉市選挙管理委員会に『無所属』と届出をした
しかし、選挙期間中に配布された『選挙公報』の名前の横に『神奈川ネットワーク運動・鎌倉』との文字を所属団体として掲げた
『無所属』で立候補届出をしたのに『選挙公報』に『神奈川ネットワーク運動・鎌倉』と記載したことは『虚偽事項』の公表罪に該当する。
これは、公職選挙法第235条第1項に抵触する ―というものです。

「受理」に格別の意味はない
はじめに触れておくと、岩田氏は「告発状は正式に受理された」「受理されて被疑者となったことは重い」としきりに述べ、別途審査庁(鎌倉市長)に対して行っている審査請求(当選無効としなかった市選挙管理委員会の不作為に対するもの)についても受理されたことを強調しておられますが、これには意味がありません。

告発状は、そこに記された容疑が事実である可能性の有無に関わらず外形的に整っていれば受け取ってもらえるのであり、行政手続法には元々「受理」というような意思表示的概念はなく、「到達」という無機的な概念があるだけです。

2週間でのスピード通知は「不起訴」
私のもとには3月29日に担当の検察官から電話があり、4月1日に横浜地検の特別刑事部に出向き、聞かれたことに答えてきました。
岩田氏のブログによれば、検察からは4月4日付で「不起訴」の通知が発出されたとのことです。

検察がわずか2週間で不起訴を決めたのは、岩田氏のあげた嫌疑に根拠がないことが明白であり、「これまで隠されていた事実」などというものが存在しない事案であったからだと受け止めていますが、氏が容疑にあげた虚偽事項公表罪の公訴時効が迫っていることへの配慮もあったのかもしれません。

右の茶色い建物が、横浜地検特別刑事部が入っている合同庁舎

選挙公報に虚偽記載はない(無所属での届出について)
神奈川ネットワーク運動は、1984年設立の地域政党です。神奈川ネットワーク運動・鎌倉は、それから1年ほどして発足しました。
ともに神奈川県選挙管理委員会に届け出ている政治団体(政党以外の政治団体)です。

県内には、神奈川ネットワーク運動・鎌倉のような自治体単位の政治団体(地域ネット)が20超あり、それらの横のネットワークが神奈川ネットワーク運動です。

40年間に県内の多くの議会に女性議員を誕生させ続けてきていますが、立候補にあたっての「公認」は地域ネットではなく、神奈川ネットワーク運動が行ってきました。私も1期目と2期目の選挙では「神奈川ネットワーク運動の公認」でした。

神奈川ネットワーク運動は、「議員は、原則として2期8年で交代する」という政治姿勢を掲げています。議員を生業とせず、代わりあうことで政治への参加を広げ、自治する市民の輪を広げるという趣旨です。

この趣旨を大切に考えつつも、地域ネットの事情に応じて「原則2期8年」をもっと柔軟にとらえる方向に進むべきであり、自分たちがその先鞭をつけようと考えたのが、神奈川ネットワーク運動・鎌倉でした。

ネットの議員が1人しかいない議会で、その1人が長く議席に居座ってしまうと、新しい人を出せなくなりますが、神奈川ネットワーク運動・鎌倉には、4人から2人に数を減らしたとは言え複数の議員がおり、新人2人という状況にならないようにしながら議席を繋いでいくことが望ましいと考えました。
また、自分たちの理念だけでなく、市議会におけるネットの存在意義と支持者・有権者の期待に応える責任を大事にしなければならないとの判断もありました。

そのようなわけで、神奈川ネットワーク運動・鎌倉は、当選すると3期目になる保坂を神奈川ネットワーク運動が公認候補とすることを求めたのですが、神奈川ネットワーク運動の中での議論は進まず、公認されませんでした。
そのため、立候補に当たっては「無所属」での届け出となりました。

岩田氏は、選管への情報公開請求により「所属党派証明書」が提出されていないことを確認したと鬼の首を取ったように書いていますが、所属党派証明書は政党等による公認の裏付けとして提出されるものですから、無所属候補から所属党派証明書が提出されていないのは、むしろ当然です。

選挙公報に虚偽記載はない(「神奈川ネットワーク運動・鎌倉 市議会議員」です)
以上述べたように、神奈川ネットワーク運動・鎌倉は、神奈川ネットワーク運動とは別の政治団体であり、選挙に際して候補者の公認を行った実績がない政治団体です。

同時に、「神奈川ネットワーク運動・鎌倉」は、市議会における会派名でもあります。1985年に鎌倉市議会に最初の議席を獲得した時から使っている名称です。
候補者は、選挙公報において、政見(取り組もうとする政策)を示すとともに、自らが何者であるかを明らかにすること(経歴や推薦人の記載もそのため)が求められます。

ですので、私は「神奈川ネットワーク運動・鎌倉 市議会議員」と記載しました。
立候補届が無所属であることとの齟齬はなく、また投票日は4月25日で、任期は5月14日まででしたから、現職の肩書です。

岩田氏は、「鎌倉市選挙公報発行に関する条例施行規程」第3条1項に「(5) 氏名欄には、候補者の氏名(略)並びに候補者の年齢、身分及び所属党派についてのこと以外は記載しないこと。」とあるのだから、氏名欄にあるのは所属党派だと見なされ、検察官が「氏名の横に書かれた『神奈川ネットワーク運動・鎌倉 市議会議員』は現在の肩書だと解釈される」としたのは納得できない ーという趣旨のことを書いています。
しかし、第3条1項(5)には、所属党派だけでなく「身分」とも書かれており、氏名の欄に記載されている事柄イコール所属党派ということはありません。
さらに言うと、鎌倉市選管が交付する選挙公報掲載のしおりは、「氏名は氏名欄に書いてください。氏名以外のことも書けない訳ではありませんが、政見の本文にあたることをここに書いてしまうと見にくくなるのでやめてください」という書き方になっています。


ダメ元の検察審会への審査申立ては?
岩田氏は、不起訴処分を不服とし、4月9日に横浜地方裁判所の中にある検察審査会に審査申立書を持参したとのことです。
検察審査会が本件を審査し、不起訴不当と結論付けることは極めて考えにくいのですが、そもそも年間の会期が決まっている検察審査会が公訴時効の前に開かれる可能性自体が低いそうです。
それでも敢えて検察審査会に審査申立てをしたのは、「有権者を欺いた疑惑」のレッテルを貼り続けておきたいからに他ならないでしょう。

選挙公報に虚偽事項を記載していたのは岩田氏自身だった
岩田氏は「公訴時効が迫る中、起訴は難しいかも知れませんが、道義的責任は明らかにしたいと願って」検察審査会に審査申立てをしたのだそうです。

この「道義的責任」という言葉を目にするまでは、岩田氏の刑事告発がレッテル貼りのための言いがかりに過ぎないことを明らかにして終わらせようと思っていました。
しかし、このような言い方をされるのであれば、こちらも「ご自身を省みて、道義的責任という言葉が使えるのですか?」と問いかけざるを得ません。

2013年10月の鎌倉市長選挙に岩田氏は立候補しました。この時の氏の選挙公報には、推薦人として元市長 竹内謙氏のお名前がありました。

2014年1月20日、私の元に竹内さんから1通のメールが届きました。
福島第一原発事故後の「東電テレビ会議」の映像の上映会を鎌倉でやりたいという提案に付け加えて「少々古い話になりますが、市長選に立候補した岩田薫氏の選挙公報に私の名前が推薦人として出ておりましたが、これは岩田氏が無断で使ったもので、虚偽事項の記載に当たります。その後、本人に抗議して、謝罪させました。」とありました。

大変残念なことに、竹内さんは、それから3カ月も経たない4月の初めにお亡くなりになりました。私はいただいたメールに返信しなかったことを悔やむとともに、竹内さんがお伝えになりたかったことをずっと忘れないようにしようと決めました。

岩田氏は、ご自分が選挙公報に虚偽記載をし、抗議を受けたことで、「他人も自分と同じようにやっている」と思われたのでしょうか。あるいは、「虚偽記載は、いかにもありそうだと思われやすく、攻撃に使える」とひらめいたのでしょうか?!

 

市役所移転に賛成する議員をおとしめ、委縮させたい?
2022年12月議会で市役所の位置を深沢に定める条例議案に賛成した議員は16人いました(うち1人は辞職)。私は自らが下した判断の説明責任を果たさなければならないと考えていますから、15人の中で一番多く情報発信をしていると思います。
今回の刑事告発の理由はそこにあるとしか考えられません。

さて、この期に及んで氏の獲得目標はかなり小さくなって、市議会建設常任委員会の委員長の辞任を求めていらっしゃるようです。
でも、選挙公報には何ら虚偽に当たる事柄も、有権者を欺くようなことも記載しておらず、道義的な責任を問われるようなことはありませんから、辞任などありえません。

6月議会からの委員会構成では、建設常任委員会に所属し続けようとは思っていますが、委員長には手をあげないつもりです。2023年度に委員長を務めていたのは、私が委員長にならないと議会3役と4つの常任委員会の委員長に女性が1人もいないことになったからです。

しかし、委員長は質問できないし、意見も述べられず、ひたすら忍耐で委員の質問を聞いていなくてはなりませんでした。次の1年間は委員として質問をし、意見も述べ、委員会討議もしたいものです。ですので、委員会の年度がかわるまでは委員長を降りませんが、年度が改まって委員長に手をあげないとしても、それは岩田氏の要請とは全く関係ない理由によるものだということを今のうちから申し上げておきます。