鎌倉市の大規模盛土はどうなっている?
梅雨前線の停滞で、鎌倉市では7月1~4日の96時間に341.5㎜の雨が降り、倒木・崖崩れ・停電の被害が発生、県西部では記録的な大雨となりました。
最大の被害は、3日午前に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流によるものでした。約5.6万㎥の土石流の量の大部分が、山の上部の県条例違反の盛土によるものであったことは衝撃的でした。
宅地化を目的としない盛土は宅地造成等規制法の対象外
盛土は、斜面を安定させる擁壁や排水設備を整えるなどの対策を講じないと崩れたり液状化したりすることがあるため、宅地化する大規模な盛土は、宅地造成等規制法で工法等が規定されています。
しかし、今回の熱海市のケースのように、残土などが持ち込まれて宅地目的以外でできた盛土は同法の対象外で、自治体が条例を制定して対応している状況です。全国で26の都道府県が、建設残土処理など、宅地造成等規制法の対象外の盛土についての独自の条例を整備しています(通信社調べ)。
このうち、一定規模を超える事業を許可制としているのは神奈川県を含む24都府県。静岡県の条例は、盛り土行為を許可制ではなく届け出制にするにとどまった作りでした(他に、香川県の事前協議制をいれて計26)。
神奈川県は緊急点検を実施
神奈川県の条例は『神奈川県土砂の適正処理に関する条例』※です。県は、熱海市の土石流災害を受け、同条例に基づいて許可を与えた県内の盛土箇所について7月12、13日に緊急点検(職員による現地確認)を実施しました。点検対象 22箇所(川崎市1、相模原市3、横須賀市4、小田原市1、茅ケ崎市4、三浦市4、厚木市3、座間市1、箱根町1)のいずれでも、重大な土砂災害に直結する異常は確認されなかったとのことです。鎌倉市には対象箇所はありませんでした。
※神奈川県条例 https://en3-jg.d1-law.com/cgi-bin/kanagawa-ken/D1W_resdata.exe?PROCID=200003328&CALLTYPE=1&RESNO=82&UKEY=1626769669606
(第9条で、「土砂埋立行為を行おうとする者は、土砂埋立区域ごとに知事の許可を受けなければならない」とするが、土砂埋立区域の面積が2,000平方メートル未満の場合は適用除外。)
大規模盛土造成地の調査を促す
一方、盛土で宅地造成を行った箇所は、起伏に富み、谷戸地形を特徴とする鎌倉市には多く存在します。
阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災では、盛土造成宅地で盛土部分が崩れる「滑動崩落」が発生したため、国は宅地造成等規制法を改定、「宅地耐震化推進事業」を創設しました。盛土造成宅地の有無と安定性の調査の手法等を定めた「ガイドライン」を自治体に示し、大規模盛土造成地マップの作成・公表を促し、現在では、全国の自治体が第1次スクリーニング調査に基づく大規模盛土造成地マップを公開しています。
この調査については、8年前に議員になって初めての一般質問(2013年6月)で「調査着手の検討を早急に始めるべき」と促して以降、議会で度々質問し、本サイトにも記事を掲載しています。
■鎌倉市、大規模盛土造成地のマップづくりを予算化 | 保坂れい子 (kanagawanet.jp) (2015年4月4日記事)
鎌倉市は、2015年度に国のガイドラインに基づいた大規模盛土造成地の位置と規模の把握を目的とした第1次スクリーニング調査を行いました。
調査の結果作成されたマップは、市のホームページに掲載されています。
■鎌倉市大規模盛土造成地マップ→ rifuretto20160331.pdf (city.kamakura.kanagawa.jp)
(「マップに表示した大規模盛土造成地は、造成する前と造成した後の地形図等を重ね合わせ抽出したおおむねの位置、規模及び種類を把握したものであり、地震時等にただちに危険であるということではありません」と書かれていることにご留意ください。)
来年度第2次スクリーニング実施予定 対象は4か所
この事業は大規模盛土造成地の有無と位置を確認して終わるのではなく、第2次スクリーニングとして、大規模盛土ごとの地震時の安定性の確認を行い、亀裂の発生など、災害発生の恐れの切迫が確認された場合は滑動崩落防止工事を実施することまでを含むものです。
先月の6月定例会建設常任委員会では、来年度2次調査を実施することが報告されました。
鎌倉市には大規模盛土造成地が287か所あり(マップに色分け表示)、そのうち盛土部分の安定性確認が必要な4か所が抽出※されました。その4か所(現段階では非公表)が2次調査(現地調査)の対象になります。
事業の目的は大地震発生時の地滑りの予防ですが、宅地の地滑りは地震だけでなく豪雨でも起きます。住んでいる土地の潜在的リスクを知っておくことは大切です。
※抽出に至るフローは、こちらの委員会配付資料を参照
【追記】
『宅地崩壊』著者の釜井俊孝 京大防災研究所教授は、「造成した土地には排水管を埋設して水を抜くが、造成地は細かく区画された私有地なので、地下の排水管全体を長期にわたってメンテナンスする仕組みがない。排水管を共同管理する仕組みが必要」と唱えています。